中国の体制転換を狙う「冷戦型ゲーム」を仕掛けても、アメリカに勝ち目なし
MANAGING CHINA’S THREAT
国内の治安維持に力を入れているのも、これが大きな理由だ。17年の治安維持費は1兆2400億元(約22兆円)で、国防費を2200億元(約3兆9100億円)も上回る。
こうした政策により、中国で革命が起きる可能性は低くなる。仮に中国でクーデターが起きたとしても、欧米の民主主義に近いものをもたらすと考える根拠は乏しい。
中国の挑戦は、真剣に受け止めるべきだ。習近平(シー・チンピン)国家主席は東アジアで帝国主義的な野心を推し進め、「平和的台頭」という長年のスローガンを事実上撤回した。毛沢東のように個人崇拝による独裁も確立した。習体制に人権を守るよう無理強いすれば、さらに危険な敵対行為を誘発しかねない。
中国による安全保障上のリスク軽減のためには、アメリカが「何をやるか」と同じくらい「何をしないか」も重要になる。バイデン政権がやるべきなのは、AUKUS(オーカス)やクアッドなど昨今進めている集団的安全保障の枠組みの構築をさらに続けること。一方、やるべきでないのは、中国の体制転換を狙った冷戦時のようなゼロサムゲームを仕掛けることだ。