最新記事

中国

習近平が喜ぶ岸田政権の対中政策

2021年10月26日(火)20時49分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
岸田首相

岸田文雄首相 Toru Hanai/REUTERS

岸田首相は対中政策として対話と交流を強調し、習近平にも来年の日中国交回復50周年記念を契機に日中友好を深めたいと伝えた。習近平の狙い通りの政策だ。自民党内からは連立相手である媚中・公明党への批判さえ出ている。野党連立を批判できるのか?

王毅外相が「岸田‐習近平」電話会談に言及

10月25日に開催された第17回「北京‐東京フォーラム」の開幕式に、中国の王毅外相(兼国務委員)はリモートでスピーチを寄せ、以下のように語った

――習近平は少し前に岸田文雄首相の要請に応じて電話会談をし、双方は来年の中日国交正常化50周年を契機として、新時代の要求に応じた中日関係を構築することで意見が一致した。両国指導者は、互いに積極的に交流し、日中関係の新たな今日工面への幕開け推進するために、両国関係の次なるステップへの大きな方向性を明確にした。(引用ここまで)

もし岸田首相が本当にそのようなことを言ったとすれば、来年のコロナ感染状況によっては、習近平の国賓来日を岸田首相は容認する可能性が出てくる。

それは全人類に未曽有のコロナ感染を広げたという習近平の初期対応の責任を問わないことにつながり、ウイグルの人権問題も南シナ海問題も香港問題も「日本は容認します」というメッセージを世界に発信するに等しい。

実際、岸田外相は習近平国家主席に何と言ったのか?

では、岸田首相は果たして習近平国家主席に電話会談でどのように言ったのだろうか。まずは日本側の言い分として日本の外務省のウェブサイトを見てみよう。

今年10月8日の「日中首脳電話会談」によれば、岸田首相は以下のように言っているとのこと(「3」のみを下に記す)。

――岸田総理大臣は、日中国交正常化50周年である来年を契機に、上記のような考え方に基づき、建設的かつ安定的な関係を共に構築していかなければならない旨述べました。習主席からは、そうした考え方に対する賛意と共に日中関係を発展させていくことへの意欲が示されました。また両首脳は両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致しました。(引用ここまで)

なるほど。王毅外相が10月25日に言ったこととほぼ一致している。

しかし、引用文の最後の部分「両首脳は両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致しました」は、少しニュアンスが異なる。

中国外交部のウェブサイトによれば、岸田首相は以下のように発言しているとある。

――岸田文雄は、中国の国慶節(10月1日の建国記念日)にお祝いの言葉を述べた。 岸田氏は、「現在の国際・地域情勢の下で、日中関係はまさに新時代を迎えようとしている。 日本は、日中関係の歴史問題から重要な教訓をくみ取り、来年の日中国交正常化50周年を契機として、新時代の要請に応じた建設的で安定した日中関係を構築するために、中国と軌を一にして協力していきたい」と述べた。 双方ともに、対話を通して相違点を解決する必要がある。 また岸田氏は「日本は、中国との経済協力や民間交流を引き続き強化し、新型肺炎対策や気候変動などの国際的・地域的な重要課題について、緊密に意思疎通を図り、協力していきたいと考えている」と述べた。さらに「日本は、北京冬季オリンピックの成功を期待している」とも述べた。(引用ここまで)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中