最新記事

中国

習近平が喜ぶ岸田政権の対中政策

2021年10月26日(火)20時49分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

つまり、日本の外務省にある「両首脳は両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致しました」は、やや不正確なのである。

これはあくまでも岸田首相が習近平に対して積極的に自ら言った言葉で、「両国が一致した」と書くと、岸田首相が習近平に自らそのように呼び掛けた事実が見えなくなってしまう。

しかし、ここは非常に重要なポイントだ。

中国の思うつぼ

岸田首相は対中政策に関する多くの日本のメディアの取材に対して、概ね以下のように回答している。

 ●安定が重要。

 ●首脳間の対話を含めて対話こそが重要。

 ●政治外交だけでなく、経済や文化を含めた日中交流が重要。

 ●言うべきことは言う。

習近平にとって、これほど喜ばしい又とないと言っても過言ではないほど、ありがたい姿勢だ。

最後の「言うべきことは言う」などは「言わない」に等しく、ただ口頭で「遺憾である」と言ってみても、具体的行動はしないのだから、中国にとっては痛くも痒くもない。

それよりも「対話が重要である」こと、さらには「経済や文化を含めた日中交流が重要である」ことなどは、まさに、習近平が主張したい内容で、それによって日本の政財界を中国に引き付けようとしている最中ではないか。

台湾TPP加盟で試される岸田首相の度胸

岸田首相は経済安全保障担当大臣のポストを内閣官房に新たに設け、省庁は所管せずに総理大臣を補佐する。「経済安全保障」を重視するのは良いことだとしても、それが真の対中政策として機能するか否かに関しては非常に疑問だ。

なぜなら上述したように岸田首相の対中政策の基本姿勢がそもそも習近平を喜ばす方向でしかないので、どんなに形式を整えてみたところで、経済安全の「防衛力」にはなり得ないだろう。

岸田首相の本気度が試されるのは、台湾のTPP(正確にはCPTPP=環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加盟だ。

現在の議長国は日本なので、何としてもTPPに加盟したいと思っている台湾は、10月14日、台湾の半導体製造大手TSMCの日本工場を建設すると発表した。

まだトランプ時代の2020年5月に、トランプの要請でTSMCを日本に誘致する話が出たことがあり、2021年2月の時点でもつくば市に誘致する話が出ていた。しかしそれらはあくまでも「研究開発」のみで、実際の半導体製造という生産ラインまでは導入する話ではなかった。しかし今般は実際の生産ラインを整備する。

と言っても最先端の半導体を製造するのではなく、22~28nm(ナノメートル)のプロセッサーという、何世代も前の半導体で、投資規模は約8,000億円の内の半分である4,000億円を日本政府が出資するという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランとの対話に応じる可能性、トランプ氏インタビュ

ビジネス

ECB、イラン戦争でも金利変更急ぐべきではない=政

ビジネス

南アフリカ経済、第4四半期は0.4%成長 市場予想

ワールド

「イラン国民は専制政治のくびき脱するべき」、イスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目のやり場に困る」密着ウェア姿がネットを席巻
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 6
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 7
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 8
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 9
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 10
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中