北朝鮮に核を売った男、「核開発の父」カーン博士が果たした役割
HOW KHAN GAVE DPRK THE BOMB
「北朝鮮の大規模な調達計画について、われわれには無線や工作員から入手した大量の証拠があった」と、米諜報当局の元高官は語った。「カーンに関する情報からは、北朝鮮が既に遠心分離機を造るための青写真を手に入れていることが分かった。彼らは遠心分離機でウランを濃縮して核兵器を開発しようとしていた。入手した情報には、遠心分離機を造るのに必要な『買い物リスト』も含まれていた」
「カーンは北朝鮮に設計図を提供した」と、米軍諜報当局のある高官は指摘した。「彼は北朝鮮にP1型とP2型の両方の遠心分離機の実物を提供した。技術だけでなく、設計図や必要な部品、ノウハウまで提供する約束だったのだろう」。ムシャラフは06年に自伝の中で、カーンが北朝鮮にP1型とP2型合わせて20基以上の遠心分離機を売却していたことを認めている。
パキスタン製の遠心分離機にはP1型とP2型があり、P2型のほうがより新しくて高性能だ。どちらの遠心分離機の設計図も、カーンが70年代にオランダにあるウラン濃縮会社ウレンコ(イギリス・オランダ・ドイツの3カ国の合弁会社)で働いていたときに盗んだものだった。
核兵器を製造するためには何千基もの遠心分離機が必要で、カーンが売却した20基程度では到底足りない。しかしカーンが提供したそのほかの詳細な情報のおかげで、いま北朝鮮はウラン型爆弾を製造するのに必要な設備を獲得できる状況にある。
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