映画『アメリカン・スナイパー』のネイビー・シールズ狙撃手と上官の、「殺害」プレッシャーの局面
EXTREME OWNERSHIP
窓辺で狙撃ライフルを構えたクリスの隣に立ち、私は無線のヘッドホンを着け、ウォリアーの兵士たちとの調整に備えた。
すると突然、ウォリアー中隊の10人の兵士たちがある建物からダッと飛び出し、通りに駆け出した。
その瞬間、全てが明らかになった!
「掃討チームを停止させ、COPへ戻れ」と、私はウォリアーの中隊長に無線で指示を出した。
一瞬で、自分たちのミスに気付いたからだ。クリスと私は、1ブロック先を見ていたのだ。戦闘地図にある建物127を見ているつもりが、ウォリアーの兵士たちが集まっている1ブロック先の建物を見ていた。
こうしたミスは都市部では簡単に起こる(実際、米軍の指揮官たちが認めるよりずっと頻繁に起こっている)が、最悪の結果をもたらしかねない。
クリスが窓辺で見た、スコープ付き武器を持つ男は、敵の狙撃手ではなかった。トリジコンACOGスコープ付きの、米軍支給のM16自動小銃を抱えて窓辺に立つ米軍兵士だった。
「よかった(サンク・ゴッド)」と、文字どおり神に感謝した。私は、クリスの最初の判断に感謝していた。はっきり特定できない相手は撃たない、という素晴らしい判断だった。
プレッシャーに屈して、クリスが大口径の弾を撃ち込んでいたら、ほぼ間違いなく殺害していただろう。
無線をウォリアーの中隊ネットワークに合わせ、何が起こったのかを中隊長に説明した。彼も、撃たなかったことに、大きな安堵のため息をついた。
「言うとおりにしないでくれて、ありがとう」。そう言った。
人生と同じで戦闘においても、結果は見えないし、見通しも定かではない。成功する保証はどこにもないのだ。
だが、成功するためには、リーダーはプレッシャーの下でも動じず、感情ではなく理屈に基づいて行動しなくてはならない。これが、勝利には欠かせない要素なのだ。
『米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)
伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ』
ジョッコ・ウィリンク、リーフ・バビン 著
長澤あかね 翻訳
CCCメディアハウス
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