韓国の若者たちは、民族の悲願だったはずの「南北統一」に興味なし
A Weakening Consensus
最大野党「国民の力」の李俊鍚(イ・ジュンソク)代表は36歳。彼は統一にはさほど熱心ではないらしい。今年7月には与野党代表のテレビ討論会で、統一を実現する唯一の現実的な道は韓国政府が朝鮮半島全体を統治することだと語り、北朝鮮の現体制の崩壊後に残された領土と国民を韓国が平和的に吸収する形が望ましいと付け加えた。李はまた、省庁再編の一環として南北交流の推進に当たる統一省の廃止まで提案した。
だが、少なくとも青瓦台(韓国大統領府)の左派は、正しい道は平和的な統一だというコンセンサスにこだわり、政府関係者は記者会見で南北関係が順調に前進していると繰り返してきた。しかし、彼らはその一方で、巡航ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイル、新型のヘリコプターや戦闘機など新しい軍事技術を追求している。
こうした動きは、平和的な吸収型の解決から、政治レベルで複雑な駆け引きを可能にする「ヌェ・ジョン(心理戦、戦略的な戦い)」型の抑止力の向上へと、スタンスが変わる可能性を示唆している。軍事主導になれば、朝鮮半島の不統一は続くだろう。
左派の変化は、来年の大統領選に向けて与党「共に民主党」の公認候補に選出された李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が掲げる北朝鮮政策にも見られる。
李は、平壌が非核化の約束を破れば直ちに制裁を科すという条件付きの制裁緩和を支持すると示している。さらに、朝鮮半島に平和経済を構築して、開城工業団地の制裁解除を国連に働き掛けると約束したが、同じ民族であるというルーツは、もはや統一の合意形成の基盤にならないとも述べている。
以前は政策が韓国世論をリード
10年前の左派は、対話を促して最終的に統一を実現するために、無条件の関与が必要であるという考え方を支持していた。
李在明の提案は、李明博や朴槿恵の時代のアプローチに通じるところもある。李明博の南北政策は原則を重んじ、厳しい条件付きだった。朴槿恵が統一は世界全体にとって「大成功」になるだろうと饒舌だったのも、統一は相互のやりとりであって条件を伴うという前提だった。もっともこれ以外の李在明の政策的立場は、文が失敗した政策の多くに似ている。
スコット・スナイダーとブラッド・グロッサーマンは共著『日韓アイデンティティー・クラッシュ』で次のように述べる。「北朝鮮に対する韓国の態度は、政府が南北関係について楽観的か、悲観的かによって大きく揺れ動いてきた。言い換えれば、政府の政策が韓国の世論をリードしてきたようなもので、政府が平壌との協力と対立のどちらを特徴とする政策を追求するかで流れが決まる」