最新記事

マイクロプラスチック

赤ちゃんは大人より大量のマイクロプラスチックを飲み込んでいた

New Study Shows Infants Consume Large Amounts of Microplastics

2021年10月11日(月)16時13分
サマンサ・バーリン
赤ちゃん

噛むたびにマイクロプラスチックが体内へ RobHainer-iStock

<海洋生物への悪影響が懸念されている微細なプラスチック粒子を、驚くべき方法で人間の乳幼児が大人の10倍以上取り込んでいる>

乳児が体内に取り込んでいるマイクロプラスチックの量は、成人の16倍に達していることが、米化学会(ACS)が発表した最新の研究結果で明らかになった。

この研究は、ニューヨーク大学医学部小児科と環境医学科の研究者によって行われたもの。研究チームは、便のサンプルを検査して、そこに含まれる一般的な二種類のマイクロプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリカーボネート(PC)の量を検出した。

10人の成人と6人の乳児のうち、チームはすべての便サンプルのなかに少なくとも1種類のマイクロプラスチックを発見したが、乳児のサンプルからは成人のサンプルの10倍の量が発見された。

アメリカ国立海洋局によると、マイクロプラスチックとは、長さ5ミリ未満の微小なプラスチックの粒子。化粧品、薬のカプセル、衣類、一部の洗剤や歯磨き粉など多くの製品に使われている。この粒子は、血流に乗って運ばれることがあるほど小さい。

マイクロプラスチックは、大きなプラスチック製品が破砕されて放出される場合もある。これは合成繊維の衣類を洗面所でのシンクで洗った程度のことでも起きる。シンクの底に細い繊維が残っていれば、マイクロプラスチックが発生した可能性がある。

ハイハイで吸い込む場合も

マイクロプラスチックはどのようにして幼児の体内に取り込まれるのか。研究チームは、幼児が人形や歯固め用のおもちゃ、哺乳瓶、マグマグなどプラスチック製品を噛むときに、体内に摂取されると考えている。

「1歳前後の幼児は、プラスチック製品や衣類を頻繁に口に入れるものだ。さらにポリプロピレン(PP)の哺乳瓶で粉ミルクを作ると、何百万個ものマイクロプラスチックが放出されることは数々の研究で明らかになっている。また加工された市販のベビーフードの多くは、プラスチック容器に入っていて、乳幼児がマイクロプラスチックを摂取するもう一つの原因になっている」と、この研究は指摘する。

研究チームはまた、乳幼児がマイクロプラスチックを含むカーペットの上を這うときも、プラスチックの粒子を吸い込むと考えている。

「PETとPPで作られたカーペットの上を、乳児が頻繁に這うと、マイクロプラスチックを体内に取り込む可能性がある」と、研究者は主張する。

マイクロプラスチックが与える悪影響について、科学的知見はまだ少ない。だが海洋大気局(NOAA)は、大量のプラスチックの微粒子が最終的に海に行き着き、海洋生物に悪影響を及ぼす可能性があると述べた。NOAAは現在、マイクロプラスチックの影響を研究する取り組みを主導している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:ウクライナ巡り市民が告発し合うロシア、「密告

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中