管理職の中国出張は危険...外資企業を待つ共産党「人質外交」の罠
China No Longer Safe to Visit
中国は違う。それどころか、中国は欧米企業が進出したい国だ。19年だけでも、中国に投資した外国企業は4万888社もある。このうち小売業が約1万4000社、製造業が約5400社に上る。
その中国が、人質外交に前向きになった今、欧米企業は従業員の派遣を再考するだろう。もちろん破天荒な経営者の一部は、そんなリスクを冒してでも、中国進出をもくろむかもしれない。なにしろ、そこには巨大市場があるし、自社の従業員が人質外交のターゲットになる確率は低い。
中国出張はやめるべき
それでも、経営者は従業員に対して法的な善管注意義務がある。また、従業員を危険にさらしたとなれば(ましてやリスクを分かっていながら)、業績がダメージを受けるだけでなく、会社のブランドに傷が付く恐れもある。
「もし私が大手企業または政治的にセンシティブな企業のCEOだったら、管理職に中国出張はさせない」と、中国で20年にわたり事業を展開してきた企業の上級幹部は言う。「オーストラリア、イギリス、アメリカの企業の大株主やオーナー、CEO、CFO、上級顧問などは、特に慎重になるべきだろう」
「本国で大規模な公共事業を請け負っている企業もそうだ。テクノロジー企業や、主要原材料を生産する企業、それに軍需企業だ。しばらくは、危険過ぎる。香港も心配だ」
実際、従業員を危険国に派遣した結果、会社が法的責任を問われたケースはある。
15年にリビアでイタリアの石油プラント会社ボナッティのイタリア人技師4人が、過激派組織「イスラム国」(IS)に拉致された事件に関連して、イタリアの裁判所は19年、ボナッティのCEOと2人の取締役、そしてリビア事業部門のトップの責任を認定。4人全員が司法取引を行い、執行猶予付きの有罪判決を受けた。
中国と欧米諸国の対立が鮮明になり、中国当局が人質外交に意欲を示すようになるなか、欧米企業の経営者は重大な選択を迫られている。確かに自社の従業員が人質になる確率は低いかもしれないが、そのリスクは常に存在する。そして万が一、そのリスクが現実になれば、人質の従業員は中国の見せしめ裁判に引きずり出されるだろう。
そんなことになれば、その会社の名前は何カ月も、ひょっとすると何年もニュースに取り上げられる。そして経営幹部は刑務所送りになるかもしれない。とりわけアメリカの企業なら、その訴訟は破滅的な結果をもたらす可能性すらある。
もちろん中国(香港を含む)に出張したり、駐在したりするビジネスパーソンはこれからもいるだろう。だが、今後その数は激減する可能性が高い。それは結果的に、中国経済に大きな打撃となるはずだ。
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