イラクの戦場でミス続出、「責任を負うべきは私だ」と言った指揮官から学ぶリーダー術
EXTREME OWNERSHIP
ここから、さらにとんでもない事態に陥った。
家から銃声がしたので、敷地の外にいたイラク兵たちが反撃し、そのあと通りを渡ってコンクリートの壁の後ろへ、周りの建物群へと避難した。
彼らが部隊の増援を要請したため、米海兵隊と陸軍が、敵の戦闘員が占拠しているはずの家に向かって、激しい一斉射撃を浴びせた。
一方、家の中では、シールズ隊員たちが身動きできなくなっていた。味方の攻撃だと判断するすべもなく。彼らにできることはただ全力で反撃し、敵だと思い込んでいる相手から制圧されないよう戦い続けることだけ。海兵隊のチームは危うく、シールズが潜む家を「空爆せよ」と指示してしまうところだった。
その日の最後の任務を終えると、大隊の戦術作戦センターに向かった。
センターの私の屋外用パソコンには、上級司令部からのメールが届くよう設定されている。画面を開いて、事件について尋ねるメール調査に答えるのが恐ろしい。いっそ戦場で死ねたらよかったのに。それが当然の報いだった、と感じていた。
起こったことにイライラし、腹を立て、落胆しながらも、私は情報収集を始めた。既に上官に報告したように、計画段階でも戦場での実施段階でも、多くの個人による重大なミスがいくつもあった。
計画は変更されたが、通知されなかった。コミュニケーション計画は曖昧で、無線連絡のタイミングをめぐる混乱が、決定的な失敗につながった。イラク陸軍は計画を微修正したが、私たちに伝えなかった。それぞれの予定が、不透明なまま推し進められた。
味方部隊の居場所も、報告されなかった。私が指揮官を務めるタスクユニット「ブルーザー」の内部でも、よく似たミスが発生していた。
失敗のリストは、かなりの数に上った。しかし、何かが欠けている。どこかに問題があり、私が特定できない欠けたピースがあるせいで、「これでは真実にたどり着けない」という気持ちにさせられる。一体誰が悪かったのだろう?
とうとう司令官と最上級下士官と審問官が、基地に到着した。彼らが荷物を下ろし、食堂で素早く食事を済ませたら、全員を集め、事件についての事情聴取をすることになる。
私は、誰かの責任を問うべく、自分のメモにもう一度目を通した。
そして、ハッとした。
個人や部隊やリーダーたちがさまざまな失敗を犯し、数え切れないほどのミスが発生していたけれど、この軍事作戦でうまくいかなかった全てに責任を負う人間は1人しかいない。そう、私だ。