最新記事

NAVY SEALS

イラクの戦場でミス続出、「責任を負うべきは私だ」と言った指揮官から学ぶリーダー術

EXTREME OWNERSHIP

2021年10月4日(月)11時55分
ジョッコ・ウィリンク(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」指揮官)、リーフ・バビン(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」小隊指揮官)

magSR20211004navyseals-1-2.jpg

「ブルーザー」隊員らが敵の占領地上空を旋回する米軍ヘリを見つめる COURTESY OF JOCKO WILLINK AND LEIF BABIN

合計約300名の米軍とイラク軍が、ラマディ東部のマラアブ地区で任務に就いていた。その地区全体が、米軍が「ムージ」と呼ぶムジャヒディン(アラビア語で「聖戦〔ジハード〕を遂行する者」の意味)たちの巣窟だった。

もう何年もマラアブは彼らの掌中に収まっているが、米軍は今、それを変えようとしている。作戦の開始からわずか数時間のうちに、シールズ狙撃分隊はどちらも攻撃を受け、深刻な銃撃戦に巻き込まれていた。

イラク兵と米陸軍兵士とシールズから成る分隊は、その地区全体の建物から敵を排除していくなかで、激しい抵抗に遭った。何十人もの武装勢力の戦闘員が、ロシア製ベルト給弾式機関銃「PKC」や破壊的なRPG-7肩撃ち式ロケット擲弾発射器、さらにはAK-47自動小銃で猛攻を仕掛けてきた。

無線をチェックしたところ、イラク陸軍の分隊と行動を共にする米軍アドバイザーが、ほかの分隊よりも早く、「激しい銃撃戦を展開中だ」と報告し、QRF(緊急即応部隊)に支援を要請していた。

その数分後、無線で、シールズ狙撃チームの1つが「集中的なQRFを!」と支援を求めた。つまり、120ミリの主砲と機関銃の圧倒的な火力で支えてくれる、米軍のM1A2エイブラムス主力戦闘戦車2台を要請したのだ。要するに、シールズは苦戦していて、相当な助けを必要としている。

私たちのハンヴィーは、エイブラムス戦車のうち1台のすぐ後ろにゆっくりと停車した。戦車の巨大な主砲は真っすぐにある建物に向けられ、交戦の準備を整えている。

私はハンヴィーの重装甲ドアを押し開けて、通りへ踏み出した。「何かがおかしい」と直感したからだ。

イラクの家はたいていそうだが、家の周りには高さ2.5メートルほどのコンクリートの壁がある。敷地に入ろうと壁の扉に近づくと、薄く開いている。M4カービンを構え、扉を大きく蹴破ると、そこにいたのはなんと、シールズ小隊長の1人だった。

彼も大きく目を見開いて、私をじっと見返している。「何があったんだ?」と私。

「ムージが何人か、この中にいます。1人撃ちましたが、こちらも攻撃されました。強硬派ですね。激しく抵抗されましたよ」

私は、1等軍曹が先ほど言ったことを思い出した。仲間のイラク兵が1人、敷地に足を踏み入れて撃たれたと。

その瞬間、何もかもがはっきりした。――この大混乱のなか、勝手な行動を取るイラク兵の分隊が、入ってはならないエリアにふらふらと踏み込んで、シールズ狙撃チームが占拠した建物に入ろうとした。

早朝でまだ暗いなか、シールズ狙撃分隊は、AK-47で武装した男が敷地内に忍び込むシルエットを目にした。まだ味方部隊が到着する時間帯ではない上に、敵の戦闘員が付近に大勢いることは知られていたから、シールズは攻撃されると考えて、AK-47を持つ男と交戦した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中