比ドゥテルテ大統領、政界引退表明 副大統領出馬撤回、憲法違反指摘受け
世論調査でも大統領としてのドゥテルテ大統領の人気は依然高いものの、副大統領出馬に関しては支持が低迷。国民の間にも副大統領という「奇手」への反発が急速に強まっていることもあり、それが今回のドゥテルテ大統領の「政界引退」表明につながったのは間違いないとみられている。
長女サラ市長出馬への期待ふくらむ
ドゥテルテ大統領の政界引退表明で長女のサラ市長の大統領選出馬への期待が一気に高まっている。というのも人気で常にトップを占めながらもサラ市長は「父(ドゥテルテ大統領)が副大統領候補を辞退しない限り私の出馬はありえない」との意向を示して「親子同時の出馬」を否定していたからだ。
ドゥテルテ大統領の2日の政界引退表明による副大統領選出馬の撤回で、サラ市長の大統領選出馬への条件が整ったことになり、与党側からは「大統領候補サラ市長、副大統領候補ゴー上院議員」という組み合わせへの期待が一気に高まっている。
パッキャオ氏は他党の議員とペア
こうした与党内の動きを受けて、一部支持派からの大統領候補指名を受けて出馬を決めたパッキャオ上院議員は党内のドゥテルテ大統領支持派との確執が強まる中、ブハイ党のジョセリート・アティエンザ下院議員を副大統領候補としてペアを組むことを10月1日に表明した。
最大与党「PDPラバン」からはパッキャオ氏が大統領候補として出馬、ドゥテルテ大統領に代わるゴー氏が副大統領候補として出馬する形となっていたが、パッキャオ氏が他党の議員を副大統領候補として組むことを表明したことから、党内情勢はますます混迷化し波乱含みの展開となることが確実視されている。
一方野党「自由党」などで組織する連合体「イサンバヤン」は9月28日、レニー・ロブレド副大統領を野党の統一大統領候補として指名することを決めた。
レニー・ロブレド副大統領は出馬を正式には表明していないが、反ドゥテルテ、反「PDPラバン」の立場から政権交代を望む世論の動向を今後見極めて出馬を早急に決めるとの見方が強まっている。
これまでに大統領選に出馬を表明あるいは政党の指名を受けているのは、パッキャオ氏、マルコス元大統領の長男フェルナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン・マルコス)氏、俳優出身のマニラ市のイスコ・モレノ市長、元警察幹部パンフィロ・ラクソン上院議員、野党のレニー・ロブレド副大統領となっている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など