ミャンマーに厳しい議長声明を発表 ASEAN首脳会議 、ミャンマーは異例の欠席
今回ASEANがミャンマー問題でここまで踏み込んだ内容で、さらにミャンマー代表が欠席したことで全加盟国による賛成が成立しないまま発表した議長声明は、これまでのASEANの「内政不干渉」「全会一致」という伝統的な原則に踏み込んだ異例の議長声明となり、ASEANのミャンマー問題に対する並々ならない決意と仲介・調停に臨む強い意欲を反映するものといえるだろう。
ただ一方でこうしたASEANの強い姿勢がミャンマーの首脳会議欠席という前例のない事態を招いたことも事実で、ASEANとして今後ミャンマーを会議の席に戻すための方策を探る必要に迫られることになる。
今回の一連の会議終了後に持ち回りのASEAN議長国はカンボジアに代わることになる。ASEAN加盟国で最も中国に近いとされるカンボジアだけに、中国を後ろ盾としているミャンマーに対してどこまで指導力、影響力を発揮できるが焦点となる。
また今後の展開次第ではミャンマーのASEAN脱退という最悪の事態もありうる状況だったが、ミャンマー軍政は26日夜に「ミャンマーは今後も5項目合意の実現などを通じてASEANと建設的に協力し続ける」として、ASEANに留まり事態打開に向けて協力する姿勢を示したことでその懸念は取り合えず払拭された。
米中対立への対応も求められる
26日にはASEAN首脳会議に続いてASEANプラス米の首脳会議も開催されバイデン米大統領が参加し「軍事クーデターは恐ろしい暴力だ」とミャンマー軍政を批判した。米大統領のASEAN会議への参加は2017年以来4年ぶりとなる。
27日以降、ASEANプラス日中韓会議に加えて米、インド、豪、ニュージーランド、ロシアなども参加する東アジアサミットという一連の会議ではミャンマー問題以外に加盟国すべてが抱える新型コロナウイルスの感染対策とワクチン接種の問題、さらに中国が一方的に権益拡大を進めてASEANのベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイなどとの間で領有権問題が起きている南シナ海の問題も協議される見通しだ。
特に米中も参加する東アジアサミットでは、米中それぞれの主張が対立する可能性もあり、ASEANとしてどうまとめるかにも注目が集まっている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など