「AIで中国に負けた」米国防総省幹部が抗議の辞任
Pentagon Official Resigns Over Belief China Has Won AI Battle
国防総省は、倫理など意に介さず開発に邁進する中国のスピードに負けた? Al Drago- REUTERS
<アメリカもいつの間にかデジタル後進国になっていた? アメリカの複数の政府機関のサイバー防衛能力は「幼稚園レベル」で人材も力不足と、最高ソフトウエア責任者のポストを辞した元幹部は言う>
米国防総省初の最高ソフトウェア責任者を辞任したニコラス・シャラン(37)が、アメリカは人工知能(AI)技術の開発競争において、中国に敗れたと指摘。自分が国防総省を辞めたのは、アメリカの技術革新が遅いことに対する抗議のためだったと明かした。
シャランは英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに応じ、中国は新興技術の開発が進んでおり、今後数十年のうちに数多くの分野――特にAIと生物工学――で世界の覇権を握るだろうとの見方を示した。
「今後15年から20年は、我々が中国との競争に勝てる見込みはない。これは私個人の意見の域を超えており、もう勝負はついている」とシャランは同紙に語り、さらにこう続けた。「(中国との競争において)今後、戦争が必要になるかどうかは分からない」
シャランは、アメリカの複数の政府機関のサイバー防衛能力は「幼稚園レベル」だと批判。実務経験をほとんど持たない多くの高官に、サイバーセキュリティ―関連の各種プログラムの運営が任されているとも指摘した。
また彼は、アメリカの技術開発が遅れていることの一因が、大手テック企業にあるとも批判。AIの活用をめぐる倫理上の問題を盾にグーグルなどの米大手企業が米政府への協力に消極的だったと語った。その一方で、中国のテック企業は倫理など意に介さず、AI分野に「巨額の投資」を行っているとも述べた。
「アメリカと同盟国の子どもたちに未来はない」
2018年8月から米国防総省の最高ソフトウェア責任者を務めていたシャランは、9月にビジネス向けソーシャルメディアのリンクトインへの投稿の中で辞任を発表。技術開発競争において、アメリカが中国に大きく後れを取っていることに抗議するためだと述べていた。
また彼は、アメリカは中国の急速な技術革新ペースに追いつくことはできないだろうとの見方も示した。
「中国がアメリカよりもずっと優位に立つようになれば、アメリカとその同盟諸国の子どもたちに勝ち目はない」と彼は言う。「中国の成長と勤勉な国民に対抗することが無理ならば、アメリカは彼らよりも賢く、より効率的に動き、機敏かつ積極的な姿勢で革新に取り組まなければならない。アメリカは常に先を歩き、世界をリードしなければならない。後塵を拝することは許されない」
シャランはフィナンシャル・タイムズに対して、アメリカが技術開発で中国に負けている可能性について、今後数週間のうちに連邦議会で証言を行う予定だと語った。報道によれば、証言の中では機密扱いの情報についても言及するものとみられる。