法人税の最低税率15%で各国が合意──不毛な税率引き下げ競争に終止符?
Seeking to Boost Post-Pandemic Revenue, 136 Countries OK Corporate Tax Rate
今後アメリカは、税率の低さではなく労働者の質と技術革新で企業を誘致すると言うイエレン(9月30日、下院財務委員会) Al Drago/Pool-REUTERS
<欧州の「タックスヘイブン」アイルランドも国際ルールを承認。発効すれば、これまで課税を逃れてきたハイテク大企業にも各国が課税できるようになる>
経済協力開発機構(OECD)は8日、大手多国籍企業に対する法人税の最低税率を15%とする国際的な課税ルールの導入で世界136カ国・地域が合意したと発表した。AP通信が伝えた。
これにより、136カ国・地域合わせて約1500億ドルの税収増が見込まれる。また、最低税率が同じになることで、多国籍企業が税率の低い国に拠点を移す動きに歯止めがかかることも期待されるとAPは伝えている。
今回の合意に向けて主導的役割を果たした1人がアメリカのジョー・バイデン大統領だ。ジャネット・イエレン米財務長官は、大企業の誘致を狙った各国の法人税率の引き下げ競争に終止符が打たれるだろうと述べた。
「アメリカは今後、法人税を引き下げる力ではなく、労働者の技能や技術革新をもたらす能力で(各国と)競うことになる。アメリカに勝ち目のあるレースだ」とイエレンは声明で述べた。
ただし、実際の導入までにはいくつかのハードルも予想される。最大手の多国籍企業の中にはアメリカ企業が多く含まれることから、カギとなるのはバイデンが提案している税制関連の法案の行方だ。議会で否決されるようなことがあれば、今回の枠組み全体の成否にも関わる可能性がある。
以下は、AP通信の報道からの引用。
グーグルなどIT大手も支持
今回の合意は、グローバル化やデジタル化が世界経済を大きく変えてきたことへの1つの対処と言える。最低税率に加え、ネットショップやウェブ広告といった事業で利益を上げているものの国内に物理的な拠点を持っていない企業の課税逃れを阻止することも可能になる。
グーグルやアマゾンといったアメリカの巨大IT企業は今回の合意を支持している。理由の1つは、一部に導入の動きが出ていたデジタルサービス税の撤廃に各国が応じたことだ。その代わり、各国は国際的な枠組みの下、巨大IT企業の売上の一部に課税する権利を手にする。
これにより、企業も国ごとに異なる税制に対応する必要がなくなり、国際的に統一された課税ルールに従えばいいことになる。
「この合意は21世紀の真の税制革命に道を開くものだ」とフランスのブリュノ・ル・メール財務相は述べた。「ついに巨大デジタル企業も、各国で利益相応の税金を負担することになる」
グーグルやフェイスブックといった企業は、法人税の安さから欧州での拠点をアイルランドに置いていた。だが7日、アイルランドはこれまでの政策を転換、合意に参加することを表明した。