死亡率を10%以上も低下させた健康アプリと医療機関のコラボ
Health apps track vital health stats for millions of people, but doctors aren’t using them
しかしそれを実際に運用するには難しい点もある。例えば、多くの患者は、ウエアラブル端末を購入したり、アプリの使用料を払い続けたりする経済的な余裕がない。
医師の報酬をどう算定するかという問題もある。現時点では、医師がアプリ経由で医療関連のアドバイスをする場合の明確な課金システムは存在しない。ただ、コロナ禍で遠隔医療が急拡大したことにより、多くの保険会社はその料金算定方法を本格的に検討するようになった。これがアプリを通じた医療サービスにも適用できるかもしれない。
だが、アプリ開発業者にとっては、アプリから得られるデータが専門的な医療に統合される仕組みをつくっても、大きな利益は期待できない。通常のアプリは、定額課金ユーザーなど有料で利用する人を増やすか、アプリ内の広告スペースを売ることによって利益を得る。
最も大きな利益を稼ぎ出すのは、ユーザーの心理を巧みに利用して売り上げを増やすモバイルゲーム・アプリだ。だが、医療系のアプリでは、こうした利益モデルは使えない。患者に何らかの商品を売り付けたり、患者の関心を広告主に販売したりすれば、患者は自分の医療データはちゃんと守られているのか、薦められた商品は本当に治療に必要なものなのか、自分がそれを購入することで主治医は利益を得るのかなど、さまざまな疑念を抱くだろう。
それは医師と患者の信頼関係(慢性疾患を治療する場合は特に不可欠だ)を傷つける恐れがある。医療に使われるテクノロジーである以上、不具合は最小限に抑える必要性もある。患者にとってアプリが使いやすいことや、患者が求めるツールを備えていることも重要だ。「うまく使えない」といった理由で、患者がアプリを使うのをやめてしまったら元も子もない。
また、ウエアラブル端末などで測定される健康データが、本格的な医療機器で測定するのと同じくらい正確なデータであることを担保する基準も、今のところ確立されていない。
それでも、適切に設計されたアプリは、効果的かつ効率的な医療を実現する上で大きな助けになる。その認識が広がれば、この分野で最大のステークホルダー、つまり保険会社が投資を増やして、医療現場と個人をつなぐアプリの開発と利用に拍車が掛かる可能性がある。高血圧症などの慢性疾患を治療する上で究極のカギとなるのは、患者と医師のやりとりだ。
従って患者だけでなく、医師にも支持される医療アプリを作れば、両者の交流は充実し、よりよい治療と健康がもたらされるだろう。
From The Conversation