巨大債務で世界を揺るがす恒大集団を作った男
Who Is Hui Ka Yan, Billionaire Founder of Indebted Chinese Property Developer Evergrande?
巨額債務問題で世界経済を揺さぶる恒大集団の許家印会長 Bobby Yip- REUTERS
<世界の株式市場に激震を走らせている中国不動産大手恒大集団の経営者は一代で巨額の富を築き上げた農村出身の大富豪>
中国第2の規模を誇る不動産開発会社、恒大集団の巨額債務問題は、金融セクター全体に衝撃を与え、世界中の株式市場の下落を引き起こした。8300万ドルの債務の支払い期日である9月23日が近づくにつれて、同社の長期的な将来の見通しは危ういものになっている。
国際信用格付け会社S&Pグローバルは最近、中国政府は恒大集団に支援を行わないだろうと予想した。だが恒大集団の創業者で会長の許家印は、従業員宛ての手紙で、同社は「最も暗い時から抜け出すだろう」と伝え、楽観的な態度を示した。この手紙に対し、賞賛の声はあがらなかった。
ロイター通信は、許の手紙は、3000億ドルを超える負債を支払い、会社を立て直す計画に触れていないと報じた。そして中国のSNSユーザーは中国最大のソーシャルメディア新浪微博(ウェイボー)で許を非難し、「妄想的」、「人をだます男」と呼んだ。
恒大集団はまもなく世界最大級の経済的破綻に直面する可能性があるが、許は昔から勝ち目のない戦いに挑みながらも、大成功を収めることに慣れていた。
中国の成長とともに成長
許は1958年に中国西部河南省の中心にある高賢鄉の農村、聚台崗で生まれた。中国国営メディアによれば、父親は国民革命軍の一員として日本軍と戦い、母親は許が1歳の誕生日を迎える前に亡くなったという。彼は主に祖母に育てられた。
若いころは、いくつも骨の折れる力仕事に携わった。中国の国営メディアによれば、トラクターを運転して肥料を掘り出す仕事をした後、セメント工場で2年間働いた。ある時点で、占い師に「将来は黄金の鉢を持つだろう」と言われた、と本人は主張している。
最終的に、許はなんとかセメント工場の仕事から抜け出し、1970年代後半に武漢鋼鉄学院(現在の武漢科技大学)に入学した。卒業後、武陽鉄鋼会社で何年も働いた後、1997年に恒大集団を設立した。その後まもなく、彼は自分があの「黄金の鉢」への道を歩みだしたことを自覚する。
恒大集団は数々の不動産投資を行い、その成功によって2009年に香港証券取引所に上場を果たし、7億2200万ドルを調達した。中国経済の成長につれて、恒大集団も成長した。2018年には、コンサルティング会社ブランド・ファイナンスのレポートで、世界で最も価値のある不動産会社にランクされた。許は同社の株式の70%を所有し、フォーブス誌の推定では、総資産約110億ドル、世界富豪番付で53位、中国国内の富豪ランキングでは10位の大富豪になった。