最新記事

中国企業

巨大債務で世界を揺るがす恒大集団を作った男

Who Is Hui Ka Yan, Billionaire Founder of Indebted Chinese Property Developer Evergrande?

2021年9月22日(水)18時46分
アレックス・ルーハンデー
恒大集団の許家印会長

巨額債務問題で世界経済を揺さぶる恒大集団の許家印会長 Bobby Yip- REUTERS

<世界の株式市場に激震を走らせている中国不動産大手恒大集団の経営者は一代で巨額の富を築き上げた農村出身の大富豪>

中国第2の規模を誇る不動産開発会社、恒大集団の巨額債務問題は、金融セクター全体に衝撃を与え、世界中の株式市場の下落を引き起こした。8300万ドルの債務の支払い期日である9月23日が近づくにつれて、同社の長期的な将来の見通しは危ういものになっている。

国際信用格付け会社S&Pグローバルは最近、中国政府は恒大集団に支援を行わないだろうと予想した。だが恒大集団の創業者で会長の許家印は、従業員宛ての手紙で、同社は「最も暗い時から抜け出すだろう」と伝え、楽観的な態度を示した。この手紙に対し、賞賛の声はあがらなかった。

ロイター通信は、許の手紙は、3000億ドルを超える負債を支払い、会社を立て直す計画に触れていないと報じた。そして中国のSNSユーザーは中国最大のソーシャルメディア新浪微博(ウェイボー)で許を非難し、「妄想的」、「人をだます男」と呼んだ。

恒大集団はまもなく世界最大級の経済的破綻に直面する可能性があるが、許は昔から勝ち目のない戦いに挑みながらも、大成功を収めることに慣れていた。

中国の成長とともに成長

許は1958年に中国西部河南省の中心にある高賢鄉の農村、聚台崗で生まれた。中国国営メディアによれば、父親は国民革命軍の一員として日本軍と戦い、母親は許が1歳の誕生日を迎える前に亡くなったという。彼は主に祖母に育てられた。

若いころは、いくつも骨の折れる力仕事に携わった。中国の国営メディアによれば、トラクターを運転して肥料を掘り出す仕事をした後、セメント工場で2年間働いた。ある時点で、占い師に「将来は黄金の鉢を持つだろう」と言われた、と本人は主張している。

最終的に、許はなんとかセメント工場の仕事から抜け出し、1970年代後半に武漢鋼鉄学院(現在の武漢科技大学)に入学した。卒業後、武陽鉄鋼会社で何年も働いた後、1997年に恒大集団を設立した。その後まもなく、彼は自分があの「黄金の鉢」への道を歩みだしたことを自覚する。

恒大集団は数々の不動産投資を行い、その成功によって2009年に香港証券取引所に上場を果たし、7億2200万ドルを調達した。中国経済の成長につれて、恒大集団も成長した。2018年には、コンサルティング会社ブランド・ファイナンスのレポートで、世界で最も価値のある不動産会社にランクされた。許は同社の株式の70%を所有し、フォーブス誌の推定では、総資産約110億ドル、世界富豪番付で53位、中国国内の富豪ランキングでは10位の大富豪になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、民間インフラ攻撃停止提案検討の用意=大

ビジネス

米景気後退の確率45%近辺、FRBへの圧力で長期影

ワールド

米国のウィットコフ特使、週内にモスクワ訪問=ロシア

ワールド

米・イスラエル首脳が電話会談、トランプ氏「あらゆる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中