最新記事

クワッド

中国への対抗強めるオーストラリアに、米英が原子力潜水艦の技術提供

How Submarine Power of U.S., Allies and Rivals Compare

2021年9月17日(金)18時00分
ジョン・フェン
「晋級」原子力潜水艦

中国人民解放軍の「晋級」原子力潜水艦 CHINA STRINGER NETWORK -REUTERS

<周辺各国の潜水艦の保有数は? そのうち原子力潜水艦は? 中国の急速な開発計画にクアッドの対抗策はどれだけ有効か?>

アメリカは9月15日、イギリスと連携して、原子力潜水艦を初導入するオーストラリアを技術支援すると発表した。インド太平洋地域において存在感を強める中国海軍に対抗して、アメリカとその同盟国が抱く切迫感が浮き彫りになったかたちだ。

日米豪印戦略対話(クアッド)の一角を占めるオーストラリアは、同地域における集団安全保障体制に欠かせない存在だと考えられている。オーストラリア政府は今後、アメリカおよびイギリスと新たに創設する安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」の支援を受け、現行のコリンズ級潜水艦6隻に代わる原子力潜水艦を8隻導入していくことになる。

オーストラリアは、隣国ニュージーランドならびにアメリカと太平洋安全保障条約(ANZUS条約)を締結しているため、規模の面で中国人民解放軍(PLA)海軍と張り合う必要はない。アメリカ当局は、オーストラリア海軍との相互運用性が実現すれば、世界最大の軍備力と破壊力を持つ潜水艦を擁するアメリカ海軍がいっそう増強されると明言していた。

アメリカには現在、就役中の潜水艦が68隻ある。すべてが原子力を動力とし、うち19隻は最新のバージニア級攻撃型原子力潜水艦だ。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のフランスが就役させている原子力潜水艦は10隻、イギリスは6隻だ。

日本の自衛隊には2021年3月、21隻目の潜水艦が川崎重工業から引き渡された。一方、日本と同じくアメリカの同盟国である韓国は18隻を運用している。日韓両国の潜水艦は、ディーゼルエンジンと燃料電池で推進するタイプだ。

ロシアは、ソビエト連邦時代に世界に先駆けていち早く原子力潜水艦を導入した国に数えられる。現在の保有数は58隻で、うち37隻が原子力潜水艦だ。

潜水艦の数で世界トップなのは...

意外にも、潜水艦の数で世界トップに立つのは、アメリカの冷戦における別の敵国、北朝鮮だ。72隻のディーゼルエンジン潜水艦は老朽化が進んでいるとはいえ、脅威であることに変わりはない。

しかし、ここ10年ほど米軍再編の焦点として定められてきたのは中国軍だ。来世紀にもそうした状態が続くという声すら上がっている。米国防総省が発表した2020年報告書によると、中国は潜水艦を60隻保有する。そのうちの少なくとも10隻が攻撃型原子力潜水艦で、晋(じん)級潜水艦が、現在強化されつつある海洋配備型核抑止力を形成しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏へのヒスパニック系支持に陰り、経済や移民

ワールド

イスラエル軍、ラファに収容所建設か がれき撤去し整

ワールド

自動車のため農産品犠牲にしない、自民党決議は当然=

ワールド

中国、インド巡礼者のチベット訪問を5年ぶりに許可 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中