ロシア下院選は「無風」にあらず、強まる議会の意義と若者世代の存在感
Putin’s Party Wants a Big Win
統一ロシアが使う「ムチ」は、訴訟や嫌がらせなど対立候補の出馬や選挙運動を妨げるあの手この手の策謀だ。統一ロシアは、長年議会内に存在し、自分たちが手なずけてきた体制内野党の候補には手出しをしないが、既成野党と一線を画す新世代の活動家には敵意をむき出しにする。
ムチの最たるものは収監中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイの率いる団体を「過激派組織」に認定した措置だ。これによりナワリヌイとその支持者は、選挙運動はおろか集会やネットを通じた情報発信もできなくなった。
反体制派の出馬を妨げる主要な障壁はほかにもある。候補者を擁立する政党は合法と見なされなければならないが、選挙管理委員会が公正とは程遠い現状では、まずそれが関門となる。たとえ合法と見なされても、弱小政党が議席を得るのは容易ではない。得票率が5%に達しなければ、比例区(全国区)の議席は配分されない。
無所属でも小選挙区には立候補できるが、そのためにはその選挙区の選挙人1万5000人以上の署名を提出しなければならない。これをクリアするのは難しい。反体制派を支持したとなると嫌がらせを受けかねず、多くの人が署名を渋るからだ。
反体制派にとっては「団結」が課題
とはいえ立候補のハードルなどより、反体制派が抱えるはるかに大きな問題がある。それは足並みの乱れだ。反体制諸派を結び付けているのは「打倒統一ロシア」の一点のみ。それを除けば、政策も政治理念もてんでばらばらだ。
ナワリヌイが当局の標的にされたのは、彼がソ連時代の反体制派であるアンドレイ・サハロフやボリス・エリツィンのように反体制諸派を結集させ、統一戦線を組める指導力を持っているからだ。
ナワリヌイに「過激派」のレッテルが貼られた今、野党は結集軸を失ったが、活動がしぼんだわけではない。無党派の活動家や既成野党の若手メンバーが統一ロシアの事実上の一党支配を崩すべく戦いを続けている。今回の選挙で彼らは少なくとも数議席を確保できるかもしれない。人々の生活に密着した政策を打ち出せば地方選でも一定の勝利をつかめるだろう。それでも野党陣営が深く分断されたままでは、現状を変えられない。
結局のところ今回の選挙も「出来レース」に終わるだろう。だが潮目が変わったのは明らかだ。プーチン肝煎りの与党が楽々と選挙に勝てる時代は終わった。ロシアの国内政治はどこに向かうのか、ここ当分目が離せそうにない。
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