国際宇宙ステーション、ロシア区画から火災報 万一出火なら対処法は?
手動での消火活動、最悪のシナリオでは退避も想定 NASA/Roscosmos/REUTERS
<ISSの一角をなす「ズヴェズダ」モジュールで火災報知器が発報。深刻な火災につながった場合、宇宙空間での対処法とは>
国際宇宙ステーション(ISS)のロシア製居住モジュール「ズヴェズダ」で9月9日、プラスチックが焦げたような異臭が充満し、匂いは他国製区画にまで流入した。出火には至らなかったとみられるものの、ISS内と地上局の警報システムが鳴動した。
米CNNは、警報はISSのバッテリーを充電するプロセスの実施中に発生し、報知器がおよそ1分間鳴動したと報じている。現時点で発煙の原因は特定されていない。
ISSには現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の星出彰彦氏など、4機関から選出された7名が滞在している。乗組員の健康に異常はなく、英ガーディアン紙によると、エアフィルターを作動させて空気の清浄化に成功し、宇宙飛行士たちは夜間の休憩に戻ることができたという。
ISSでの火災、鎮火マニュアルは
宇宙ステーションという孤立した空間で火災に見舞われた場合、どのような対処が講じられるのだろうか? JAXAは、火災は減圧および空気汚染とともに、ISSで定義されている災害レベルで最も深刻な「クラス1」に分類されると説明している。
火災が検知されるとISS全体の警告・警報システムに通知され、各モジュールに搭載の警告・警報パネル(C&Wパネル)が鳴動することで、全区画のクルーに警戒を促す。クラス1のアラームが発生すると、対処のため全クルーを動員するものと定められている。
また、システムによる自動的な措置が発報と同時に実施される。NASAで飛行管制官を務めるロバート・フロスト氏は、質疑応答サイト『クオラ』を通じ、詳細な動きを説明している。
フロスト管制官によると、煙探知機が作動した段階で当該モジュールを制御する中央コンピュータがこれを認識し、各種設備を連動させて火災の拡大と煙の拡散を抑える。区画内の換気システムを自動的に停止させ、延焼と他区画への煙の流入を抑える。
また、ISSでの火災は電気系統が火元となる可能性が最も高い。このことから、各種機器を収容している壁面ラックへの電源供給を遮断し、まだ生きているシステムの保護が図られる。