最新記事

宇宙ステーション

国際宇宙ステーション、ロシア区画から火災報 万一出火なら対処法は?

2021年9月14日(火)14時45分
青葉やまと

手動での消火活動、最悪のシナリオでは退避も想定 NASA/Roscosmos/REUTERS

<ISSの一角をなす「ズヴェズダ」モジュールで火災報知器が発報。深刻な火災につながった場合、宇宙空間での対処法とは>

国際宇宙ステーション(ISS)のロシア製居住モジュール「ズヴェズダ」で9月9日、プラスチックが焦げたような異臭が充満し、匂いは他国製区画にまで流入した。出火には至らなかったとみられるものの、ISS内と地上局の警報システムが鳴動した。

CNNは、警報はISSのバッテリーを充電するプロセスの実施中に発生し、報知器がおよそ1分間鳴動したと報じている。現時点で発煙の原因は特定されていない。

ISSには現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の星出彰彦氏など、4機関から選出された7名が滞在している。乗組員の健康に異常はなく、英ガーディアン紙によると、エアフィルターを作動させて空気の清浄化に成功し、宇宙飛行士たちは夜間の休憩に戻ることができたという。

ISSでの火災、鎮火マニュアルは

宇宙ステーションという孤立した空間で火災に見舞われた場合、どのような対処が講じられるのだろうか? JAXAは、火災は減圧および空気汚染とともに、ISSで定義されている災害レベルで最も深刻な「クラス1」に分類されると説明している。

火災が検知されるとISS全体の警告・警報システムに通知され、各モジュールに搭載の警告・警報パネル(C&Wパネル)が鳴動することで、全区画のクルーに警戒を促す。クラス1のアラームが発生すると、対処のため全クルーを動員するものと定められている。

また、システムによる自動的な措置が発報と同時に実施される。NASAで飛行管制官を務めるロバート・フロスト氏は、質疑応答サイト『クオラ』を通じ、詳細な動きを説明している。

フロスト管制官によると、煙探知機が作動した段階で当該モジュールを制御する中央コンピュータがこれを認識し、各種設備を連動させて火災の拡大と煙の拡散を抑える。区画内の換気システムを自動的に停止させ、延焼と他区画への煙の流入を抑える。

また、ISSでの火災は電気系統が火元となる可能性が最も高い。このことから、各種機器を収容している壁面ラックへの電源供給を遮断し、まだ生きているシステムの保護が図られる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中