ロシア、「ドラゴンをなだめる」対アフガニスタン戦略
CALMING THE DRAGON
ロシアのプーチン大統領はアフガニスタン情勢についてほぼ沈黙を守っているが GRIGORY SYSOEVーSPUTNIKーKREMLINーREUTERS
<他国を尻目にタリバンとの協力関係を誇示する、かつての「敗戦国」ロシアの皮算用>
8月31日のアメリカの完全撤退を前に、欧米諸国の大使館や軍関係者の脱出が続いてきたアフガニスタン。その期限より2週間も早く政権が崩壊し、イスラム主義勢力のタリバンが首都カブール入りして、全権掌握を宣言したため、混乱に拍車が掛かった。
そんななか驚くほど静かなのがロシアだ。100人以上の職員が勤務するカブールのロシア大使館も、「平常運転」が続いている。これはロシアが、タリバンから安全を確約されているからだ。
「われわれの大使館は既にタリバンの警護を受けている」と、ドミトリー・ジルノフ大使は16日に語っている。「タリバンは、ロシアの外交官を髪の毛1本傷つけることはないと約束した」
同日の国連安全保障理事会では、ロシアのバシリー・ネベンジャ国連大使が、「パニックに陥る必要はない」と悠然と語った。翌17日には、ジルノフがタリバンの代表と会い、改めて安全の保証を得た。
なぜ、ロシアはタリバンとこれほどうまくやっている(ように見える)のか。
タリバンはロシアでもテロ組織と認定されており、メディアは非合法組織であることを明記するよう義務付けられている。それなのにジルノフは、タリバンの権力掌握後の振る舞いを称賛した。カブールは今、これまでよりずっと安全に感じられるとさえ言った。
かねてからロシアは、アシュラフ・ガニ前大統領(現金を詰め込んだヘリコプターで逃亡したとされる)をアメリカの傀儡と呼び、タリバンとの協力関係を構築することに強い関心を示してきた。
「この7年間、タリバンとの関係構築に励んできたのは無駄ではなかった」と、ロシア大統領特使を務めるザミール・カブロフは言う。今後のアフガニスタンでは、タリバンが指導的役割を果たすだろうとも語っている。
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タリバン政権の孤立は確実
ロシアとタリバンの関係は、とりわけ2017年以降緊密になってきた。タリバンの代表がたびたびロシアを訪問して、セルゲイ・ラブロフ外相ら政府高官と話し合いを重ねた。
最近も1カ月前にタリバンの代表団がモスクワを訪問して、記者会見を開催。ロシアと中央アジアのロシアの同盟国を脅かさないこと、アフガニスタン国内で活動する過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いを継続することを約束した。