ロシア、「ドラゴンをなだめる」対アフガニスタン戦略
CALMING THE DRAGON
ロシア国内では政府がテロリストと交渉したこと、さらには記者会見の場まで与えたことを批判する声も多かった。だがタリバンとしては、ロシアと手を組めて大喜びだろう。
「タリバン政権下のアフガニスタンは国際的に孤立するだろう」と、オマル・ネサル現代アフガニスタン研究センター所長(モスクワ)は分析する。「(そんな中で)中央アジア諸国、とりわけアメリカのライバル国から支持を得られたことは重要だ」
今のところロシアは、タリバン政権を承認することも、タリバンをロシアにおける活動禁止組織から外すことも急いでいないようだ。しかし将来的には、こうした措置を取る可能性はあると、政府関係者はほのめかす。
新たなタリバン政権に対するロシアの態度は、「中央アジア諸国を攻撃しないという約束を守る能力と、他のテロ組織とのつながり、そして米ロ関係」など複数の要因に左右されるだろうと、ネサルは語る。
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対アメリカで利害が一致
しばらく前なら、ロシアとタリバンが手を組むことなど想像もできなかった。
ロシアの前身であるソ連は、1979年にアフガニスタンに侵攻して、イスラム主義勢力(アメリカの支援を受けていた)の激しい抵抗に遭い、1989年に撤退を余儀なくされた。10年間に命を落としたソ連兵は1万5000人以上とされる。
しかも、タリバンは前回アフガニスタンの政権を握っていた99年、ロシアからの分離独立を求めるチェチェンのイスラム原理主義勢力を支援し、ロシアに対するジハード(聖戦)を宣言した。
ところが2001年にアメリカがアフガニスタンに侵攻して、タリバン政権を崩壊させると、タリバンは対アメリカで協力できないかと、ロシアに持ち掛けたと、BBCは報じている。ロシア政府はこの提案を拒否したが、近年の米ロ関係の著しい冷え込みを受け、タリバンとの協力に前向きになったようだ。
2017年には、ロシアがタリバンに武器を供給していると、レックス・ティラーソン米国務長官(当時)が批判した。2020年には、ロシアがタリバンに報奨金を払って、アフガニスタン駐留米兵を殺害させているという情報も明るみに出た。
米国防総省は昨年の議会報告書で、ロシアがタリバンの協力を得て「アフガニスタンで影響力を拡大し、米軍の撤退を早めようとしている」と指摘した。