混乱のミャンマー スー・チー氏は21日にも一部容疑で判決か
スー・チー氏はすべての容疑でそれぞれ最高刑の有罪判決が言い渡されると、服役期間の合計は75年に及ぶとの報道もあり、軍政としては長期の実刑判決を下すことでスー・チー氏の政治生命を完全に絶ち、反軍政の抵抗運動を続ける国民に精神的な打撃を与える狙いがあるのは間違いないとみられている。
コロナ感染検査は陰性
13日の公判に欠席したスー・チー氏の体調に関して弁護団は「車酔いのような状態でめまいや気だるさがあり、立っていることが辛い状況だったことから裁判所に欠席を求め、裁判官もこれを認めたため休廷となった」としながらも「健康状態は決して深刻な状況ではない。おそらく精神的な理由が原因ではないか」との見方を示していた。
その後念のために受けたコロナ感染の検査では、すでにスー・チー氏はワクチン接種を受けていることもあり陰性となり、健康不安への心配はとりあえず払拭された形となった。そして弁護団によると、翌日の14日の公判にスー・チー氏は元気な姿で出廷したといい、国民をひとまず安心させた。
ただ、今年76歳という年齢と2月1日のクーデター発生直後から軍によって身柄を拘束され、以来首都ネピドーの自宅と特別法廷が開かれる裁判所を往復するだけの生活だけに常に健康を心配する声は常に付きまとっている。
市民の武装抵抗に軍政側に焦りか
スー・チー氏の公判では当初、長時間かけて審理を行い、裁判自体を長期化させることで反軍政の抵抗運動を続ける民主勢力のスー・チー氏支持を離反させようとの狙いがあったとされていた。
しかし21日に一部の容疑で判決が言い渡される可能性が出てきたことに、裁判を裏で仕切る軍政、特にミン・アウン・フライン国軍司令官ら幹部に焦りがあるのではないかとの見方も出ている。
というのも9月7日に民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」が国民に対して「武装による一斉蜂起」を呼びかけたという事情がある。
その「一斉蜂起指令」を受けた結果、各地で武装市民による軍や軍関連企業の通信タワーや通信ネットワークへの爆破、破壊活動が激化。各地で「国民防衛隊(PDF)」として武装した市民らによる軍兵士や警察官との衝突が増加。兵士や警察官の死者増加も報告されている。
こうした事態を背景に、軍政から「とりあえず早く実刑判決を下すことで軍政への武装抵抗に影響を与えたい」との意向が働いた可能性が、一部とはいえ早期の結審に結び付いたとの観測が有力視されている。
21日に「本当に判決が言い渡されるのか」を含めて、今後のスー・チー氏に対する公判と武装市民や少数民族武装勢力による実質的な内戦状態の成り行きが今後のミャンマー情勢の大きなカギを握るといえるだろう。