タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年
アフガン問題を解決できれば、今度こそノーベル平和賞まちがいなしだろうとトランプは思ったかもしれない。
戦略的な中国がその点を見逃すことは考えにくい。
いずれにしても、アフガン和平協議の主導権を上海協力機構に持って行った中露の目論見が、トランプの米軍撤収への決意を促すという効果を発揮したことは確かだ。
トランプがタリバンと和平合意に至るまで
2017年1月に正式に走り始めたトランプ政権は、4月には「ロシアがタリバンに武器を供与している」という疑惑を公言し始めた。事実、その疑惑の証拠となる映像をCNNが入手したとして、7月25日、<ロシアがタリバンに武器供給か、入手映像が示唆 CNN EXCLUSIVE>という見出しで情報を発信した。
ロシアを警戒したトランプ政権は、前述の2017年4月14日にモスクワで開催された和平交渉には欠席している。きっとトランプは、「このままではロシアに主導権を奪われてしまう」と焦ったに違いない。
アメリカ国内でも嫌戦ムードが広がっていた。
途中の経緯はあまりに複雑なので、骨子だけを書くなら、2018年2月26日、タリバンがアメリカ政府に直接交渉を呼びかけたのに対して、2018年7月23日、アメリカのアリス・ウェルズ国務次官補佐官代理がカタールの政治事務所で秘密裏にタリバンと会談を行った。
その結果、アメリカとタリバンは2020年2月29日に「和平合意」に漕ぎ着けた。その後の詳細は省くが、米軍の撤退こそがタリバンの勝利であり、中露の勝利でもあった。
タリバンが政府軍に勝つ方法も、中国の解放戦争における毛沢東の戦略に学んだものだが、これに関してはチャンスがあれば別途論じる。
習近平が描いたシナリオを示す世界地図
スウェーデンにあるV-DEM研究所がDemocracy Report 2021. Autocratization Turns Viralを発表している。
以下に示すのは、その中にある「民主化度」に関する世界地図だ。
民主化度が高い国は青色で、民主化度が低い国は赤色で示してある。
V-DEM研究所のDemocracy Report 2021より