タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年
これはタリバンとの間で、「反テロ」を条件に「経済支援」を交わした一つの証左として位置づけることができる。
パキスタンを使ったアフガン和平プロセスへの関与
「一帯一路」に関して中国がパキスタンに働きかけ「パキスタン回廊」で沸き立ったのは周知の事実だ。しかし、その陰で「密かに」動いていた、もう一つの習近平の狙いを知る人は少ないだろう。
習近平政権が誕生した後の2013年5月、李克強(国務院総理)がパキスタンを訪問し、中国との間の「パキスタン経済回廊」構築に署名した。
2015年4月には習近平本人がパキスタンを訪問し、一帯一路の強化を約束した。
この流れの中で、パキスタンが主催して2016年1月にアフガン問題に関する四ヵ国調整グループが誕生した。
こうして習近平はパキスタンを使いながらアフガン問題和平プロセスを「上海協力機構」へとシフトさせ、和平プロセス問題でロシアのプーチン大統領との連携を深めていくのである。
モスクワを前面に出してトランプを焦らせる習近平の戦術
習近平は今年の7月16日になってもなおガニ大統領と電話会談をしたことでもわかるように、タリバンとアフガニスタン政府の両方をうまく扱いながら、タリバンをコントロールしてきた。しかし目立つとウイグル問題を抱えている関係上、東トルキスタン・イスラム運動組織を刺激する可能性が大きくなる。またアメリカから必要以上に警戒されるのも避けたい。
そこで習近平は、自分自身は表に出ず、ロシアのプーチン大統領に前面に出てもらっている。二人の間でどのような棲み分けをしたかは、二人以外にはわからないかもしれないが、結果として表面化している現象を列挙してみよう。最初が「2016年」であることに注目していただきたい。
●2016年12月27日:ロシア主導のアフガニスタン和平協議、モスクワで開催(モスクワ和平協議)
●2017年2月15日:第2回モスクワ和平協議
●2017年4月14日:第3回モスクワ和平協議(アメリカ欠席!)
●2017年6月8-9日:カザフスタンのアスタナで開催された第17回上海協力機構首脳会合でアフガニスタン問題の協議再開に合意
●2017年10月11日:ロシア外務省主催の上海協力機構のアフガニスタン和平に関する国際会合をモスクワで開催。