創造性が爆発する黄金期「ホットストリーク」、才能開花の鍵は2つの習慣だった
成功者たちは分野こそ異なれど、2つの習慣を特定の順序で実行していた gorodenkoff-iStock
<才能のピークが続く期間は俗にホットストリークと呼ばれる。迎えるには、ちょっとしたコツがあるという>
優秀なアーティストも研究者も、オリジナリティ溢れる良質な成果は数年間に集中して量産されることが多い。俗に「ホットストリーク」と呼ばれる黄金期であり、それまでとはまったく違ったスタイルがクリエーターのなかで完成する。
抽象表現主義の巨匠であるジャクソン・ポロックは1946年から50年、一見ランダムに絵の具を撒いたようにも見えるドリップ・ペインティングの手法で次々と作品を生み出し、世間に衝撃を与えた。
映画監督のピーター・ジャクソンはそれまで人気を得ていたカルト路線から一転、2001年から03年発表の『ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)』三部作で監督・脚本・製作を務め、別次元の成功を手にしている。
最新の研究によると、このような成功者たちは分野こそ異なれど、いずれも2つの習慣を特定の順序で実行しているのだという。その習慣とは、「探索」と「活用」だ。
膨大なアート作品と論文を解析
米ノースウェスタン大学・ケロッグ経営大学院のダシュン・ワン博士らの研究チームは、創造性に直結しやすい活動・教育手法を探るべく、ホットストリークを生む活動パターンを探った。チームは数十万点の絵画や既存の学術論文などをもとに、芸術家や研究者などの活動パターンを分析している。
対象となったのは、画家・映画監督・科学者という3つの異なるキャリアタイプだ。研究の結果、これらいずれの分野においても「探索」と「活用」がホットストリークを産んでいることが確認された。
画家については、2000人以上の画家による80万点以上の絵画作品をディープラーニングで処理し、年代ごとの筆致や題材としたオブジェクトなどの変化を分析した。映画監督については4300人以上の監督について、作品のジャンルとプロットの構造、そしてキャストに選定した役者たちを異なるロジックのAIで処理し、それぞれ年代ごとの特徴を洗い出した。科学者に関しては2万人を超える著者による論文と参考文献の引用関係をモデル化し、年代ごとの研究トピックと所属コミュニティの変化を追っている。
分析の結果、いずれの分野でもホットストリークは突然たどり着けるものではなく、さまざまな手法の模索を続ける探索期を経た成果であることが判明した。研究内容は自然科学分野の学術誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』上で公開されている。
リスクある探索期を経てホットストリークへ
チームは論文のなかで、探索期は「現在あるいは過去に成功を収めたエリアを超越し、実験と探求に駆り立てる」期間だとしている。未知のエリアでの試行錯誤は「リスクが高く、ゆえに成果にも大きなムラが生じやすい」が、「予期していなかった異質なフィールドの組み合わせによる革新的なアイデアに遭遇する確率を上昇させることがある」という利点を生み出す。