最新記事

日本政治

横浜市長選で惨敗、菅首相に一段の逆風 自民党内に強まる衆院選への不安

2021年8月23日(月)10時48分
菅義偉首相

横浜市長選で菅義偉首相の推す候補が大敗し、菅氏が狙っていた衆院選先行、総裁選後回しのシナリオは一段と厳しさを増した。写真は新型コロナウイルス対策について会見する菅氏。7月30日、首相官邸で撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

横浜市長選で菅義偉首相の推す候補が大敗し、菅氏が狙っていた衆院選先行、総裁選後回しのシナリオは一段と厳しさを増した。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、内閣支持率の反転が期待できない中、自民党内で総選挙前の総裁交代を求める声が高まるのは必至とみられる。

当選3回以下の若手

NHKなどによると、任期満了に伴う22日の横浜市長選は立憲民主党など野党系が推薦・支援した横浜市立大元教授の山中竹春氏が当選を確実にし、菅氏が支援した元国家公安委員長の小此木八郎氏は敗れた。自民党は24日午前に役員会を開き、菅首相はこの場で市長選を総括する公算が大きい。今後の政権運営に絡んだ発言をする可能性もあり、与党内では注目されている。

今年に入り支持率の低下傾向が止まらない菅内閣は、ワクチン接種の進展と東京五輪での日本選手活躍によるムード好転で政権浮揚を図る狙いだった。しかし、五輪開幕と軌を一にしてコロナの感染が急速に拡大、8月の世論調査で内閣支持率は30%を割り、軒並み過去最低を更新した。

この秋に衆議院選挙を控え、菅首相が顔では戦えないと懸念する自民党内では、地盤の弱い若手を中心に総裁選の先行実施論が広がった。一方、菅氏はパラリンピック閉幕直後の9月にも衆院の解散に踏み切り、総裁選は衆院後に先送りし無投票再選を狙う算段だった。

横浜市長選挙で菅氏が強力に支援した元衆院議員・小此木が大敗したことで、首相への逆風は一段と強まりそうだ。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「総選挙は菅氏で戦えないという声が高まるということが間違いない」と話す。

自民党の中堅幹部は選挙結果が判明する前の22日午後、小此木氏敗北の確率が高いとの情報を踏まえ、「(自身の)地元での自民党に対する見方は大変厳しく、菅首相の体制のままではなかなか厳しい」と総裁選の早期実施を求めた。

特に、安倍晋三前首相のもとでしか選挙を経験したことがない当選3回以下の議員の間で不安が高まっている。「自分の力というより安倍前首相の顔で勝っており、自分の選挙がものすごく不安」と、伊藤氏は言う。総裁選が先行して実施された場合、派閥で菅氏に投票することが決まったとしても、「素直に従うか分からない」と指摘する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中