最新記事

アフガニスタン

タリバンが米中の力関係を逆転させる

2021年8月15日(日)21時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
タリバン

アフガン各地でタリバンが攻勢(8月10日) Taliban Handout/REUTERS

アフガニスタンにタリバン政権が誕生するのは時間の問題だろう。米軍撤収宣言と同時に中国とタリバンは急接近。一帯一路強化だけでなく、ウイグル問題のため習近平はアルカイーダ復活を認めないだろう。となると、アメリカができなかったことを中国が成し遂げ、中国が世界の趨勢を握ることにつながる。

7月28日、タリバンが天津で王毅外相と会談

7月26日にアメリカのシャーマン国務副長官が訪中し、天津で王毅外相らと会ったことは7月29日のコラム<米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず―それでも習近平との近さを自慢するバイデン>で書いた。シャーマンと会った翌日の27日には同じく天津で王毅はモンゴルのバトツェツェグ外相と会い、28日には、なんと、アフガニスタンのタリバンを代表する一行が同じく天津を訪問して王毅外相と会談している

タリバンはアフガニスタンにおける反政府武装勢力で、アメリカが支援してきたアフガニスタン政府と対立してきた。ところが米軍がアフガニスタンから撤収すると宣言して以来、タリバンは一瞬で勢力を拡大し、まもなくアフガニスタンを制圧する勢いである。

以下に示すのは王毅外相とアフガニスタンのタリバン政治委員会のバラダール議長との写真と、タリバンの政治委員会や宗教評議会あるいは宣伝委員会などの関係者一行との合同写真である。

endo20210815202301.jpg
タリバンのバラダール議長と王毅外相(中国外交部のウェブサイトより)

endo20210815202302.jpg
タリバン代表団(外交使節)と王毅外相(中国外交部のウェブサイトより)

王毅はこの会談で以下のように語っている。

――中国はアフガニスタンの最大の隣国として、常にアフガニスタンの主権独立と領土保全を尊重し、アフガニスタンの内政に不干渉を堅持し、アフガニスタン国民全体に対して常に友好政策を追求してきた。 アフガニスタンはアフガンの人々のものであり、アフガニスタンの未来と運命はアフガンの人々の手に委ねられるべきだ。米軍とNATO軍のアフガニスタンからの性急な撤退は、まさにアメリカのアフガニスタン政策の失敗を意味しており、アフガニスタンの人々は自分たちの国を安定させ、発展させる重要な機会を得ている。

これに対してタリバンのバラダールは以下のように応じている。

――中国を訪問するチャンスを得たことに感謝する。中国は常にアフガニスタン国民の信頼できる良き友人であり、アフガニスタンの平和と和解のプロセスにおいて中国が果たした公平で積極的な役割は大きい。タリバンは、平和を目指し達成することに十分な誠意を持っており、すべての当事者と協力して、アフガニスタンの政治体制を確立し、すべてのアフガンニスタン国民に広く受け入れられ、人権や女性と子どもの権利と利益を守ることを望んでいる。(中略)中国がアフガニスタンの将来の復興と経済発展に大きな役割を果たすことを期待している。そのための適切な投資環境を作っていきたい

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中