最新記事

中東

アフガニスタン、数日中にタリバンが首都到達 欧米各国、文民退避や大使館閉鎖へ

2021年8月14日(土)09時51分
タリバンの兵士

アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが急速に勢力を拡大し、首都カブールに迫る中、欧米各国による文民退避や大使館閉鎖が相次いでいる。写真はタリバンの兵士。8月12日、ガズニ州の州都ガズニで撮影(2021年 ロイター/Taliban Handout/via REUTERS)

アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが急速に勢力を拡大し、首都カブールに迫る中、欧米各国による文民退避や大使館閉鎖が相次いでいる。

タリバンは13日も進撃を続け、同国第2の都市カンダハルと第3の都市ヘラートを制圧。米政府高官によると、タリバンが数日以内にカブールに到達する可能性があるという懸念も台頭しているという。

米国防総省の報道官は13日、「現時点でカブールは差し迫った脅威にさらされていないものの、カブールを孤立させようとしていることがタリバンの動きから見て取れる」と述べた。

ロイターが確認した通知書によると、カブールの米大使館は職員に対し「大使館内にある機密情報を減らす」ために文書や電子機器などを廃棄する焼却炉の利用が可能と伝えた。

米国務省の報道官は「米国のフットプリントを最小限とする」通常の手続きと説明した。

ドイツのマース外相は、カブールの独大使館の職員を最小限に減らし、セキリュティを強化すると発表。さらに、大使館職員や現地の支援スタッフらの国外退去に向けて月末に計画していたチャーター機の派遣を前倒しする方針を示した。

フランス外務省もアフガンに滞在する仏国民に対し、できる限り早い時期に出国するよう改めて要請した。

デンマークとノルウェー両国は、現地の治安情勢悪化を踏まえ、カブールの大使館を閉鎖し、職員らを退避させると発表した。

米国と英国も12日、大使館職員ら文民の退避のため数千人の軍部隊を派遣すると発表した。

国連は職員をアフガンから退避させないとしつつも、一部職員を国内でカブールから別の地域に移動させる方針を示した。

グテレス国連事務総長は「軍事力行使による権力掌握に勝ち目はない。内戦の長期化もしくはアフガンの完全な孤立化にしかつながらない」とし、タリバンに対し即時攻撃をやめるよう呼び掛けた。

アフガンのサレー第1副大統領はガニ大統領が議長を務める安全保障会合後、政府軍の能力を評価し、政権がタリバンに対抗するためにあらゆる手段を講じると表明した。

また、治安筋によると、北大西洋条約機構(NATO)は13日に緊急会合を開催し、アフガンの情勢悪化を巡り協議した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・タリバンがアフガニスタンを奪い返す勢い──バイデンは何を読み違えたのか
・タリバンと手を組む中国──戦火のアフガニスタンを目指す3つの目的
・米軍のアフガン撤退は中国との競争に集中するため? 判断は本当に正しいか


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中