株価の日米格差は縮小へ ワニの口は年内に閉じる
米国では1年後の企業業績と株価にギャップが生じており、景気回復による業績改善を株価がかなり先取りしている格好だ。もっとも株価が景気や企業業績の変動を半年~1年くらい先取りするのは通常のことだが、株価水準と13ヶ月目以降の業績予想から逆算すると、現在の米国株は2年以上先の業績改善まで織り込み済みだ。
ミニバブルともいえる米国株高を演出しているのは、FRB(米連邦準備理事会)による未曾有の金融緩和だろう。今年5月、米国の消費者物価指数(CPI)が市場の予想を超えて急上昇すると、市場ではFRBが緩和縮小の開始を前倒しするのではないかといった懸念が台頭し、株価が急落する場面があった。
米国の物価が過熱するとFRBが早期の緩和縮小に追い込まれかねない。緩和縮小は米金利上昇を招き、企業の業績改善を通常よりも先取りした(=利回りが低い)米国株の魅力が低下し、株価急落に繋がる恐れがあるからだ。
その後、パウエルFRB議長が「粘り強く緩和状態を続ける姿勢」を繰り返し強調したこと等を受けて、金融市場では早期の緩和縮小を警戒するムードは遠のいた。コロナ変異株による景気回復ペースの鈍化懸念も重なり、5月のCPIショックで一時1.7%強まで急騰した米国の長期金利は1.2%程度に低下、米株式市場も落ち着きを取り戻した。
3――日本株優位で、ワニの口が閉じる公算
今後は年末にかけて米国株が軟調に推移する一方、日本株は底堅い展開が想定される。米国株は前述のとおり割高な水準にあり、米国の物価や労働市場、コロナ変異株の動向、要人発言などに敏感に反応しやすい。
特に、ミニバブルともいえる昨年来の米国株高を演出してきたFRBの緩和縮小が現実味を帯びてくると、利益確定売りに押されやすくなるだろう。早ければ8月26~28日のジャクソンホール会議前後、遅くとも9月21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)がターニングポイントになる可能性が高いとみられる。