中国の経済的影響力維持を指示した習近平
習近平国家主席 Thomas Peter-REUTERS
対中包囲網を標榜するバイデン政権の対中貿易額が増加する一方、習近平は政治局会議を開き中国経済に関する外部環境に警戒を発した。チャイナマネーによる引力に陰りが出ると北京冬季五輪にも影響するからだ。都内では同日、駐日中国大使を遣って「反中感情を煽るな」という講演をさせている。
習近平が中共中央政治局会議を招集
例年の北戴河会議を前に、習近平は7月28日から立て続けに会議を招集しているが、7月30日には現在の経済情勢と今後の指針に関する中共中央政治局会議を開催した。
会議ではコロナからいち早く回復した中国では、まだ回復しきれていない諸外国との交易による中国の経済成長を着実にさせてはいるものの、外部環境は複雑で厳しく、国内経済の回復は未だに不安定で不均一であることなどを指摘した。したがって今後は警戒を強め、中国独自でも成長していける堅実なものに持っていかなければならないことなどが議論された。
同日、国務院新聞弁公室で財政部が「中国の上半期のGDP成長は12.7%」と記者発表しているものの、習近平はむしろ「身を引き締めよ」というメッセージを発していた。
外部環境とは何を意味しているかと言うと、まずはアメリカの対中政策と実態がいつ急変するか分からないことと、中国以外の国がコロナ回復した時に中国を今現在ほどには必要としなくなるかもしれないということを指している。その変化に対応するためには、自国における生産の質を高めることと内需を強化し供給側の構造改革を進めるしかないと指示した。
国内経済が未だ不安定で不均一であるのは、たとえば必ずしもハイテク部品を国内生産できておらず、小売業などはアリババやテンセントなど大手IT企業によって独占されていて中小及び零細企業の活動の場が狭められていることなどを指す。中小企業から最先鋭のハイテク製品が生まれる可能性を育てよという指示も含めている。
会議はほかにももろもろの問題を討議したが、ここでは主として、現在はどのような「外部環境」にあるのかを考察してみたい。
激増したアメリカの今年上半期の対中貿易額
7月13日、中華人民共和国海関(税関)総署は「2021年1月から6月までの我が国における対米輸出入状況」を発表した。それによれば2021年上半期における中国の対米輸出は2528.637億ドルで前年同期比の42.4%増であり、輸入は879.424億ドルで前年同期比の55.8%増に達するという。
バイデン政権はあれほど激しく対中包囲網を呼びかけ、中国経済とのディカップリングを叫びながら、何のことはない、対中貿易額は激増しているではないか。