最新記事

アフガニスタン

「米軍撤退で戦争が終わる」は米政権の自己欺瞞(マクマスター元NSC補佐官)

H.R. McMaster Warns Against 'Self-Delusion' That Afghanistan Withdrawal Means War's End

2021年8月30日(月)18時51分
アンドリュー・スタントン
マクマスター

元軍人で率直な物言いで知られるマクマスター Carlos Barria-REUTERS

<元安全保障担当補佐官が、現実を直視できないトランプとバイデンがいかにアフガニスタン政策を誤ったかを指摘>

H・R・マクマスター元米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、アフガニスタンからの米軍撤退は戦争の終結を意味する、という考えは「自己欺瞞」にすぎないと警告した。

「現代の辺境に命を捧げたわが国の兵士たちを称えるためには、アメリカは、自己欺瞞から抜け出し、この終わりなき永遠の戦争は、米軍の撤退によっては終わらないという現実に直面するべきだ」と、トランプ政権の国家安全保障大統領補佐官だったマクマスターは、NBCニュースの報道番組「ミート・ザ・プレス・サンデー」で語った。

アフガニスタンからの米軍撤退のやり方について、トランプ政権とバイデン政権の両方を批判しながら、この戦争は自滅という形で敗北に終わった、とマクマスターは言う。

2017年の時点で「持続可能な取り組み」に着手していれば、タリバンによるアフガニスタンの政権奪取を防げる可能性があったが、当時のトランプ大統領は計画を放棄し、「オバマ政権のときと同じ問題をさらに悪化させた」と述べた。

「彼らは、たとえイスラム過激派組織に降伏しても、その結果として悪いことなど起こらないと自分に思い込ませたのだ」と、彼は言った。「結果は、ご覧の通りだ」。

タリバンをつけあがらせた

マクマスターは、アメリカがいかにアフガニスタン政府と政府軍の心理に「次々と打撃を与えてきたか」を説明し、アフガニスタン政府にとっては、この上「(アメリカとタリバンの)和平交渉に加われないというという打撃に耐えることは不可能だった」と語った。

「トランプ政権時代の政策が引き起こした最も嘆かわしい結果は、アメリカが実質的にタリバンを強くしてしまったこと、そして米軍撤退の過程でアフガニスタン政府と政府軍を弱体化させたことだ。それはバイデン政権でさらに悪化し、挽回できなかった」と、マクマスターは指摘した。

マクマスターのコメントと前後して、米議会や国家安全保障の専門家からも、アフガニスタンからの米軍撤退のやり方を批判する声があがっている。最近、フロリダ州選出のマイケル・ワルツ下院議員(共和党)は、米軍撤退はアルカイダの復活につながると述べた。

過激派組織「イスラム国」(IS)傘下のグループ「ISホラサン州」(IS-K)は、8月26日にカブール国際空港でテロ攻撃を実行し、米軍人13人とアフガニスタン人160人以上を殺害した。アメリカはテロを企てたIS-Kの計画者をドローンで攻撃し、殺害した。

バイデンは8月28日の演説で、これは報復の最終形態ではないと言明。そしてアメリカは「凶悪なテロ攻撃に関与した者を今後も追い続け、代償を払わせる」と約束した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏の政府支出削減、26年会計年度は1500億

ワールド

米、対中追加関税は計145% フェンタニル対策で発

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、政策明確化まで金融政策据え置きを

ワールド

トランプ氏、日鉄によるUSスチール買収の必要性に懐
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 10
    「宮殿は我慢ならない」王室ジョークにも余裕の笑み…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中