最新記事

新型コロナウイルス

ワクチン未接種で重症化、ICUに運び込まれる妊婦がアメリカで急増

CDC Tells Pregnant Women to Get COVID Shot

2021年8月12日(木)17時02分
レベッカ・クラッパー
コロナワクチンの接種を受ける妊婦

ワクチンを怖がって未接種のままコロナに感染するほうが母子を危険にさらす Hannah Beier -REUTERS

<米CDCはワクチン接種で流産のリスクが増すことはないと発表。母体と胎児を守るためにワクチン接種を強力に推奨>

新型コロナウイルスのワクチン接種で流産のリスクが高まる可能性は認められない──米疾病対策センター(CDC)は8月11日、新たな分析結果を発表し、妊娠中の女性にもワクチン接種を強力に推奨する方針を打ち出した。

妊娠20週までにファイザーかモデルナのワクチンを少なくとも1回接種した2500人の女性を対象にした調査では、流産した人の割合は約13%で、一般的な流産率の範囲内であることが確認された。

一方、もしワクチンを接種していない妊婦が新型コロナに感染すると重症化の確率が高く、妊娠合併症のリスクも高まることが分かっている。だがCDCによると、アメリカでは妊婦の接種率は低く、少なくとも1回接種を受けた妊婦は23%にすぎない。

以下はAP通信が伝えた詳細だ。

「ワクチンは安全で有効だ。感染力の高いデルタ株が広がり、未接種の妊婦が感染し、重篤な症状に陥る症例が報告されている今は、これまでにも増して接種を強力に推進する必要がある」と、CDCのロシェル・ワレンスキー所長は声明で訴えた。

胎児に免疫がつく可能性も

各地の産科医の医師会も最近相次いで、妊婦へのワクチン接種の推進を訴えている。CDCは今回の分析結果が出る前から、妊婦にワクチン接種を勧めていたが、これまでは強力な推奨を控えていた。今回の勧告は、妊婦だけでなく、授乳中の女性や妊娠を希望している女性にも当てはまる。

ワクチンの承認のための臨床試験(第3相治験)には妊婦は含まれていなかったが、これまでに何万人もの妊婦が接種を受けた実績から、安全性は十分確認されたと見ていいと、専門家は言う。しかも妊娠中に接種を受ければ、生まれてくる赤ちゃんもしばらくは感染から守られる可能性があることも報告されている。

CDCの新指針は、感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、アメリカでも再び感染が拡大して、重症者や死者が増えている状況下で発表された。

一部の保健当局者は、妊婦に限らず、デルタ株は重症化のリスクが高いと警告しているが、重症化率についてはまだはっきりしたデータはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳、エネルギー停戦で合意 広範なウクライナ停

ワールド

イスラエル外相「ガザ攻撃は数日続く」、米国に事前に

ワールド

国際移住機関、援助資金3割減見通し 米政権の拠出見

ワールド

イスラエル、ヒズボラへの攻撃も拡大 レバノン停戦脆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料高騰問題」の深層
  • 4
    「トランプ錯乱症候群」(TDS)って何? 精神疾患に…
  • 5
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「二酸化炭素(CO₂)排出量…
  • 7
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    鈍器で殺され、バラバラに解体され、一部を食べられ…
  • 10
    51年ぶりに上陸...サイクロン「アルフレッド」がオー…
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 9
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中