ロシアのワクチン「スプートニクV」、治験データ不備で欧州商機逃す可能性も
スプートニクVの海外販売に携わる政府系ファンド「ロシア直接投資基金(RDIF)」は、前述のロイターの記事について、偽情報キャンペーンの一環としてスプートニクVに害を与えることを目論む匿名情報を基にした「虚偽の、不正確な主張」を含んでいると反発。根拠は明らかにしなかったが、スプートニクVが「西側の医薬品ロビー」によって攻撃を受けている可能性を示唆した。
RDIFによると、スプートニクVは60カ国以上で登録されている上、アルゼンチン、メキシコ、ハンガリーなどこのワクチンを既に使用している国々の調査により、安全性と有効性が示されており「深刻な有害事象は報告されていない」という。
フランス科学者チームの指摘については、「スプートニクVのセルバンクはEMAの要件を完全に順守している」と説明。EMAと緊密に協力しており、EMAの調査団が製造施設を訪問済みで、「既に完了した査察の結果、何ら大きな批判的コメントを受け取っておらず、このワクチンの安全性と有効性に疑問を呈する問題提起はなかった」としている。
ウシ胎児血清巡る疑惑
スプートニクVは、EUに承認申請がされる前から障壁に直面していた。
昨年11月にフランス政府が派遣した科学者チームの調査結果に詳しい関係者4人のうち3人によると、調査した書類にはマスターセルバンクを培養するために使用されたウシ胎児血清の由来が記されていなかった。ウシ胎児血清は世界中でワクチン開発に広く利用されているが、1980年代に牛海綿状脳症(BSE)が拡大して以来、欧州と北米の当局は開発者に対し、安全な素材を使っていることを示すよう義務付けた。
ここでもやり取りは円滑に進まなかったとみられ、関係者4人のうちフランスの科学者セシル・チェルキンスキー氏は、マスターセルの安全性について質問した際のロシアの開発者側の回答に「不満」を感じたと述べている。
チェルキンスキー氏はその後、ロイターの取材を受けた5月以降、スプートニクVがマスターセルとウシ胎児血清に関して潜在的な問題を抱えていることは「科学的に反証された」と説明。「スプートニクVが多くの国々で国民一般に接種された今では、その無害性を疑うのは難しくなった」と話している。
RDIFはロイターの取材に対し、ガマレヤは「追跡不可能なウシ血清をセルバンクの準備に使ったことは決してない」と主張。スプートニクVのセルバンクが、BSEのような症状に関連するタンパク質、プリオンを含んでいないことは外部調査により検証済みだとしている。
(Michel Rose記者、Polina Ivanova記者、Emilio Parodi記者)
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