中国の対米報復制裁は北京冬季五輪ボイコットを招くか?
7.香港民主委員会(Hong Kong Democracy Council=HKDC、海外香港人団体)
25日にシャーマン米国務副長官訪中――アラスカ会議直後の対中制裁に対するお返し
今年4月15日のコラム<ウイグル問題制裁対象で西側の本気度が試されるキーパーソン:その人は次期チャイナ・セブン候補者>に書いたように、バイデン政権の米財務省外国資産管理室(OFAC)はEUなどに合わせて、3月22日に新たに新疆生産建設兵団の王君正共産党委員会書記と、新疆公安局の陳明国局長の2人を制裁対象となる特別指定国民(SDN)に指定した。SDNの制裁内容は米国内資産の凍結と、米国民との取引禁止となる。
これは米中外交関係者が3月18日から19日にかけてアラスカで大論争を行った直後に相当し、このタイミングであったことに中国は腹立たしい思いでいただろう。
今般、明日25日にアメリカのシャーマン国務副長官が訪中し、天津で王毅外相と会談することになっているが、23日の対米制裁の発表は、アラスカ会議直後の対中制裁に対するお返しと解釈することができる。
シャーマンに「勝手な真似はさせない」とクギを刺したと考えるのが妥当だろう。
EU対中報復「北京冬季五輪ボイコット」の二の舞か?
しかし、アメリカによる16日の対中制裁に比べて、今般の対米制裁のなんと広範囲なことよ。
これは正に7月15日のコラム<習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結――欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議>に書いたように、アメリカから「大きなしっぺ返しが来る可能性を秘めている。
たとえばEU(の欧州議会)と同じように来年2月の北京冬季五輪への「外交的ボイコット」をバイデン政権として正式決定する可能性を否定することはできないだろう。
もし仮にそうなった時には、日本はアメリカに準ずる方針を取れるのか?
明日の米中外相会談の結果とともに、アメリカの「お返し」と、それに続く日本の選択から目が離せない。
※当記事は中国問題グローバル研究所(GRICI)からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。