最新記事

ミサイル

極超音速ミサイルの試射を成功させたロシア、アメリカを威嚇

Russia Warns Pentagon That Hypersonic Missiles in Europe Could Lead to Conflict

2021年7月21日(水)18時10分
ブレンダン・コール
極超音速巡航ミサイル「ジルコン」の試射

マッハ7の速さで350キロ先の標的に命中、しかも核搭載可能な極超音速巡航ミサイル「ジルコン」の試射 RUSSIAN DEFENSE MINISTRY

<ロシアが奪ったクリミア半島沖の黒海に散る新冷戦とミサイル配備の火花>

ロシア政府は米国防総省に対し、米軍が極超音速ミサイルをヨーロッパに配備すれば、偶発的な戦闘を引き起こす恐れがあると警告した。そのわずか数時間前には、ロシアが戦艦や潜水艦への搭載を検討している極超音速兵器の試験発射を成功させて見せた。

7月19日、国防総省のジョン・カービー報道官は、ロシアが極超音速巡航ミサイル「ジルコン(Tsirkon)」の試射に成功したとする発表について、質問を受けた。

この会見に先立つ7月19日、ロシア国防省は、アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦が、このミサイルの試射に成功したと発表していた。北極海のロシア領にあたるバレンツ海最南部から発射されたミサイルは、マッハ7まで加速して約350キロ離れた標的に命中したと、タス通信は19日に伝えた。

「ロシア領」クリミア沖のNATO

ロシア国防省は、「ジルコンの戦術的・技術的特性は、この試射を通じて確認された」と述べ、このミサイルの動画も公開した。このミサイルについては、ウラジーミル・プーチン大統領が以前、マッハ9まで到達可能で、最長で約1130キロ先の標的にも命中させられると、その性能を誇っていた。

このミサイルについて尋ねられたカービーは、以下のように回答した。「プーチン大統領の発言については、もちろん承知している。(中略)ロシアの新たな極超音速ミサイルが、地域の不安定化を招き、相当なリスクをもたらすというのは重要な指摘だ。なぜなら、これは核弾頭の搭載も可能なシステムだからだ」

カービーは、さらにこう付け加えた。「これとは対照的に、アメリカは核を搭載しない極超音速攻撃能力の開発に専念している。ゆえに我々は、NATOの同盟国と共に、抑止戦略に引き続き注力しつつこの地域の安定化を図っていることになる」

6月末からNATO(北大西洋条約機構)が黒海で行っている軍事演習に、ロシアは神経を尖らせている。NATO軍は、2014年にロシアが併合したクリミア半島沖で「航行の自由」作戦を展開しているからだ。それに加えてのカービーの発言は、ワシントンの駐米ロシア大使館からの猛反発を招いた。

ロシア大使館は、会見におけるカービーの公式発言記録のスクリーンショットと赤い感嘆符とミサイルの絵文字を散りばめた手の込んだツイートを投稿し、以下のように主張した。「@PentagonPresSec(国防総省報道官)に改めて思い出してほしいのだが、(アメリカ国旗の絵文字)の極超音速(ミサイル)をヨーロッパに配備するという可能性は、それがいかなるものであっても、地域の著しい不安定化を招くものだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中