最新記事

アメリカ社会

ロサンゼルスがマスク再義務化、「ワクチンは効いている」が問題は...

2021年7月20日(火)20時57分
シャノン・パラス
6月15日、マスク着用義務が解除されたハリウッド大通り

6月15日にはハリウッド大通りでもマスク着用義務が解除されたが MARIO TAMA/GETTY IMAGES

<ワクチンは感染拡大防止に極めて有効という意見は変わらないが、それでも感染者数が増加して対策が必要になった理由>

ロサンゼルス郡当局は7月15日、ワクチン接種の有無にかかわらず7月17日から屋内でのマスク着用を義務付けると発表した。同郡の新型コロナウイルス感染者数は3月以来最悪。その多くがデルタ株の感染者だ(郡当局によると、6月27日~7月3日に確認された感染者の71%に上る)。

問題はワクチン接種の進捗状況だ。郡公衆衛生局の発表にはこうある。「ワクチンを2回接種した人は、デルタ株感染による重症化から十分に保護されることが新たなデータから確認されているが、1回しか接種していない人は保護が十分ではない。2回接種済みの人が感染したり他人にうつすケースはごく少数であることを示す証拠もある」

公衆衛生局は免疫力が低下している人や、ワクチン接種で十分な抗体ができにくい人、まだワクチンを接種できない子供たちを守るために行動している。感染者数の増加に伴い、さらなる対策が必要になったというのが、現時点での当局の結論だ。

マスクが再び義務化されたのは、ワクチンの効果が想定より弱いからではない。ワクチンは依然としてウイルスの感染拡大防止に極めて有効だ。まれに感染するケースもあるが、多くは無症状で重症化することはほとんどない。

接種証明は政治的にも技術的にも困難

つまり今回のマスク義務化は、今春に米疾病対策センター(CDC)が発表した「ワクチンを接種していれば、屋内でもマスクの着用や社会的距離の確保は必要ない」という指針を覆すものではない。

現時点で最も厄介な問題は、ワクチンを打った人と打っていない人が同じ空間に混在していることだ。理屈の上では、ワクチン接種の有無を確認して未接種の人にはマスクをしてもらえばいい。しかし、ワクチン接種を証明するワクチンパスポートは政治的に問題があるだけでなく、技術的にも導入が困難だ。

多くの店舗やレストランは既にワクチン未接種の来店客にマスク着用を呼び掛けているが、要請が守られているかどうかを確かめるのは難しい。着用の強制はさらに困難だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中