習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結──欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議
――中国とEUは包括的な戦略的パートナーであり、今日の世界における2つの独立した力だ。 われわれには中国とEUの対話と協力の優位性を維持する責任があり、相互利益とウィンウィンを堅持する義務があり、手を携えて地球規模の課題の解決に貢献する自信がある。(中略)「国際秩序」は「小さなグループによる家族のルール」を押し付けるべきではなく、「国連憲章を基準とした国際システム」によって形成されるべきだ。
対してボレル氏はおおむね以下のように応答している。
――中国の急速な発展は客観的な事実であり、EU側は中国と制度的な対立をするつもりはなく、「新冷戦」や小さなサークルにも賛同しておらず、欧中関係を不安定に陥れるつもりはない。 EUと中国の協力関係は基本的かつ戦略的なものだ。欧中が強固な関係を築くことは双方の利益につながる。EUは中国との接触と対話を再開したいと考えている。EU-中国(中欧)投資協定の発効は双方の利益にかなうものであり、そのために協力したい。
以上が中国外交部による報道で、EU側の報道は、それとニュアンスを異にする。
EU側報道によれば対談は以下のような内容であったらしい。
●両者は3月22日の中国の報復制裁に関して率直な意見交換を行った。
●ボレル氏は香港・新疆ウイグル自治区の動向に関するEUの懸念を強調した。
●EUと中国の交流のチャンネルは開かれている必要がある。
●王毅外相はボレル氏の中国訪問を改めて要請した。
●ボレル氏はEU・中国戦略対話を秋口に開催する用意があると表明した。
(以上)
いずれにせよ、中国の焦りと憂慮が見て取れるではないか。
EUが北京冬季五輪ボイコット
そのような中、追い打ちをかけるように、同日(7月8日)、欧州議会は2022年北京冬季五輪への出席を見送るようEU加盟国の政府関係者に求めることを決議した。
決議に法的拘束力はなく、さらに2022年北京冬季五輪への「各国政府代表や外交官の招待を辞退する」よう求めているにすぎないので(すなわち、選手派遣をボイコットしているわけではないので)、インパクトはそれほど大きくない。
またEU27ヵ国のうち18ヶ国は「一帯一路」加盟国なので、予断は許されないものの、EUの対中行動には注目したい。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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