東京五輪は日本経済に逆風? 政治リスクも急浮上
金融市場では、出遅れ感のある日本株にとって、東京オリンピックの開催がさらなる逆風になりかねないとの警戒感が出ている。都内で8日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)
金融市場では、出遅れ感のある日本株にとって、東京オリンピックの開催がさらなる逆風になりかねないとの警戒感が出ている。新型コロナウイルスの感染拡大懸念により、海外投資家の買い出動が期待しにくいためだ。秋の解散・総選挙に影響する可能性も指摘されており、政治リスクが意識され始めている。
緊急事態宣言でも五輪開催
日米の株式市場を見ると、年初来上昇率は8日までに、米ダウが12.47%、米S&P500が15.04%、米ナスダック総合が12.97%。一方、日経平均は2.46%、東証株価指数(TOPIX)は6.41%にとどまっている。日本株の出遅れ感が著しいが、見直し機運は盛り上がらず、むしろ五輪を前に「日米差」は一段と拡大している。
「五輪開催が日本株の重しだ」と、市場関係者の多くが意識し始めている。日本政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合を開催し、東京都に対して、12日から8月22日まで緊急事態宣言を発令することを正式決定した。一方、東京五輪は首都圏をはじめ6都道県で無観客となったが、予定通り開催される予定だ。
ブラジルで6月に開催されたサッカーの南米選手権(コパ・アメリカ)では、選手や関係者に数十人の感染が明らかになった。東京五輪と同様に外部から隔離する「バブル方式」を採ったが違反事例も出ている。東京五輪をきっかけとした感染増加への懸念はぬぐえない。
ワクチン接種で先行していた英国では、ワクチン接種率の低い若者を中心にデルタ株の感染が急速に広がった。イスラエルの保健省は5日、コロナワクチンの発症予防効果が5月の約94%から約64%に減少したと発表している。「デルタ株の登場で、ワクチンを打てばすべて解決するといったシナリオは崩れた」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは指摘する。
バリュー/グロースともかい離
足元の日米株価の格差の一因は「五輪リスク」とSBI証券の北野一株式ストラテジストはみている。TOPIXをS&P500指数で割った「日米相対株価」は、7月に入って年初来で最低水準となった。
バリュー株の代表格とされる日本株に対し、米株はグロース株の性格が強く、日米の相対株価の動きは、米国のバリュー株とグロース株の相対株価の動きとの相関性が高いと北野氏は指摘する。ところが4月以降、日米相対株価の下方かい離が広がった。
国内の新規感染者数の7日間平均の増加の動きとの相関がうかがわれ、5月に感染者数が減少に転じると下方かい離も縮小に向かった。ただ、かい離縮小の動きは鈍かった。北野氏は、感染者数の減少基調の継続を市場が信用しなかったためと分析、「日本にあって他国にない要素となる五輪の開催が懸念材料になっているのではないか」と話している。