東京五輪は日本経済に逆風? 政治リスクも急浮上
ロンバーオディエ・プライベートバンクのステファン・モニエ最高投資責任者(CIO、ジュネーブ在勤)は「日本株は年初来で出遅れているが、これは政治・パンデミック・五輪という悪材料を織り込んだ結果だ」としている。
総選挙に影響も
五輪期間中の感染者数の動向は秋の解散・総選挙に影響しかねない。五輪が感染の拡大を伴わず成功裏に終われば、政権への支持は高まるとみられている。感染の抑え込みがうまくいけば、GoToキャンペーンの再開などの財政投入への期待感が高まりやすい。
デルタ株の広がりは予断を許さないが、世界のコロナ感染に伴う死者数や重症者数は減少傾向にあリ、ワクチン普及による抑制効果との見方もある。7月後半から本格化する企業決算では、経済正常化で先行する米中での景気回復を受けてトヨタ自動車などのグローバル企業の好決算が見込まれ、前向きな見通しが伝われば相場の支援材料になりそうだ。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用本部長は「感染者数がピークを打ったことが見えてきて、景気敏感株が物色される流れが強まれば、日本株に海外勢の資金が入ってくるだろう」と話す。
もっとも、感染抑制に失敗した場合には、菅義偉首相の求心力が低下するリスクが警戒されそうだ。菅政権下では、知事選や4月の衆参の3選挙は事実上の敗北続きで、都議選も党内の期待に届かない結果となった。来年には参院選も控えており「選挙の顔」への逆風が生じかねない。
ロンバーオディエPBのモニエCIOは「自民党は2012年以降、選挙で頼りになる公明党と連立を組むが、菅首相の支持率は低下しており、衆院選に向けて政治的に不安定な状態が続く」との見方を示す。現在の株価水準は割高ではないがカタリストが不足し、日本株の投資判断は「アンダーウェイト(弱気)」と話している。
「海外投資家は政治リスクを一番嫌がる」と、三菱UFJMS証の藤戸氏は指摘する。財務省が公表するデータで海外勢は、6月6日の週から4週連続の売り越しで、売り越し額も週を追うごとに拡大している。
(平田紀之 取材協力:植竹知子 編集:伊賀大記、橋本浩)
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