バイデン政権の中国企業制裁はポーズだけ?
問題は「ウイグル」という分類にある企業だ。
このカテゴリーでは、ほとんどが最後にまとめて列挙してある「ソフトウェア・システムの開発」をする企業なので、使うのは「頭脳」だから、制裁のしようがないと言っていいだろう。おまけに製品(ソフト)は中国政府の官公庁に提供しているので、サプライチェーンにおける支障もきたさない。
他に、ハイクビジョンと関係する会社があるが、ハイクビジョンは2019年のトランプ政権時代に制裁を受けており、結果、制裁の影響をあまり受けなかった。
というのは、ハイクビジョンが使用している半導体の80%が中国国内産で、残り20%はアメリカ以外の代替品で補うことができたからだ。分析表に書いた通り、その証拠に2020年における収益は落ちておらず、むしろ制裁後に増加している。
バイデン政権はポーズのみか
結果、何が言えるかというと、バイデン大統領は「さあ、私はこんなに強く対中強硬策を実施しているぞ!」と、アメリカの選挙民(トランプ支持者)に見せてはいるものの、実際は中国にそう大きな実害を与えていないという、実に狡猾なことしかしていないということだ。
これは6月7日のコラム<バイデン対中制裁59社の驚くべき「からくり」:新規はわずか3社!>と同じ構図である。
ウイグル問題に関しては一定の効果
もっとも、ウイグル問題に関しては、中国に対して一定の効果はもたらしているものと期待していいだろう。
日本のように、ウイグルの人権侵犯に対して制裁を与えることができる日本版マグニツキー法案(自民党の中谷議員らの呼びかけによって成立していた議員連盟により提唱された法案)を自民党の二階幹事長や公明党により菅政権は潰してしまったのだから、そういう国に比べれば、アメリカはよく頑張っているという評価はできるだろう。
対中包囲網に関して、あたかも日米が足並みを揃えているようなことを言っているが、ウイグル問題等に関しては、足並みはそろっていないのである。
世界情勢を見誤らないように注意を喚起したい。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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