最新記事

中国

バイデン政権の中国企業制裁はポーズだけ?

2021年7月12日(月)11時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

 それを軸に調べた結果が下記に示した「制裁対象企業分析表」(分析表と略称)である(表は表示の関係上、上下二分割にした)。

   分析表
endo20210712104201.jpg
endo20210712104202.jpg
制裁対象企業分析表(アメリカから制裁を受けた中国企業の分類と分析結果)(分析:筆者)

左の列には制裁対象となった英文の企業名と、それに対応する中国語の企業名を日本文字に置き換えて表示した。真ん中の列にあるのは、アメリカが制裁理由とした分類である。米商務部に列挙してある企業名は、アルファベット順になっているので、それ等を分類した。右側の列に書いたのが分析結果だ。

この分析表から明らかなように、「軍事利用」として制裁された企業は5社あり、輸出制限違反企業は4社で、そのうち1社は個人なので、正確には「3社+1人」が輸出制限違反である。これは、たとえばイランに輸出してはならないとされている製品を輸出したといった事例を指している。

最後の「ウイグル」と書いてあるのは、新疆ウイグル自治区のウイグル人(ウイグル族)の人権侵害に関与した企業のことで、14社ある。

さて、分析してみた結果、たとえば軍事利用のトップにあるArmyflyは軍隊のIT製品を生産する会社で、もともとアメリカの半導体チップを基本的に使っていない。中国国内で生産されたものしか基本的に使わないので、制裁されても影響は受けない。

2番目にあるKylandは、Armyflyの親会社で、28nm(ナノメータ)の半導体チップ(KS2300X)を生産しており、アメリカからの輸入は必要ない。なぜなら、28nm半導体チップは中国内で十分に生産できるサイクルが出来上がっているからだ。したがって制裁を受けても影響を受けない。

3番目にあるKindroidは2番目にあるKylandの半導体チップを使用しているので、たとえば上位3社は互いに「内循環」として作用し、国内でのサプライチェーンを形成している。

中国には今「双循環」といって、「内循環」と「外循環」の二つにより経済を成立させ、できるだけ「内循環」を増やすという方向に動いているが、特に軍事に関しては早くから「内循環」に依存するようにしているので、ここに制裁をかけても、あまり有意義ではない。

「輸出制限違反」に関しては検討するまでもないので省略する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中