最新記事

米中関係

「バイデン・習近平」会談への準備か?──台湾問題で軟化するアメリカ

2021年7月10日(土)13時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
バイデンと習近平

2013年、訪中して習近平国家主席と会談したバイデン米副大統領(当時) REUTERS/Lintao Zhang

米軍高官は「中国の6年以内台湾武力攻撃」説を取り下げただけでなく、米政府高官は「台湾独立を支持しない」や「中国との平和共存」をさえ唱え始めた。その背景に何があるのか?麻生発言にも言及して考察する。

中国による台湾攻撃の警戒レベルを下げているアメリカ

今年3月9日、インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官は、米議会公聴会で、「中国(大陸)は6年以内に台湾を武力攻撃する」と指摘していた。

 「それはあり得ない」として、私は4月21日のコラム<「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する理由>で詳細を考察した。

案の定、6月17日になると、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は米議会下院軍事委員会の公聴会で「近い将来に台湾武力侵攻が起きる可能性は低い」と述べ、6月23日になると、さらに一歩進んで「中国が台湾に2年以内に軍事侵攻する兆候は、現時点ではない」との見解を示した。

なぜ同じ米軍高官がトーンダウンしたのかに関して、ミリー議長は相当に苦しい、以下のような弁明をしている。

――デービッドソン等が言ったのは、「台湾侵攻のための能力向上を、中国が2027年に向けて加速している」という意味で、2021年から数えれば6年(筆者注:27-21=6)ということを指しています。(中略)少なくとも近い将来、まあ、ここ1,2年の間と言ってもいいかもしれませんが、中国がいきなり何かを決意して行動することはないでしょう。

要は、「目下のところ、中国には台湾侵攻の意図はない」と言ったことになる。

前述の4月21日のコラム<「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する理由>では、「台湾が独立を宣言したとき以外は、中国は台湾を武力攻撃しない」と書いたが、ミリーの証言が6月17日、23日であることを考えると、もう一つ、別の風景が見えてくる。

すなわち、デービッドソンの「6年以内台湾攻撃」説は、6月11~13日にイギリスのコーンウォールで開催されたG7首脳会議(サミット)のコミュニケのために発せられたもので、それが終わってしまえば、あとは「習近平と仲良く」という方向に早くも向かっているように思うのである。

台湾独立を支持しない――中国に対する負けを認めたキャンベル

その証拠に、カート・キャンベル米国家安全保障会議・インド太平洋調整官は7月6日、アジア協会(Asia Society)というシンクタンクにおける講演で、「アメリカは中国と平和的に共存できる」とし、「台湾の独立を支持しない」と述べていることに注目したい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中