「バイデン・習近平」会談への準備か?──台湾問題で軟化するアメリカ
キャンベルの主張のいくつかをピックアップして以下に記す。
●中国が主張する「一つの中国」を認め、その枠内でのみ、台湾との「力強い非公式関係」を支持する。
●中国はますます自信を付けている。現在の米中関係は冷戦の枠組みではなく、あくまでも競争関係だ。
●アメリカはアジアにおいて強大な地位を持っているが、
しかしこの地位は既に滑り落ちており、アメリカは危機に面しているので、アジアに全面的に大量投資していかなければならない。
●アメリカの課題は、中国にチャンスを与えると同時に、中国が「平和と安定の維持に反する行動」を取った場合に対応する戦略を打ち出すことだ。
●バイデン政権の今年の焦点は、国内の復興、ワクチン、同盟国との関係にある。
何ということだ。
これではまるで中国に対する負けを認めたようなものではないか。
特に最後の「バイデン政権の今年の焦点は、国内の復興、ワクチン、同盟国との関係にある」は、これまで私が疑問を呈してきた「バイデン政権の対中強硬策」が、やはり「虚勢」であったことを示唆する。
バイデンは習近平との会談を準備しているのか?
なぜアメリカは台湾をパラメータとして、このように強硬レベルを下げていくのか?
その解答は、やはり上述のキャンベル演説に垣間見られる。
キャンベルは同じ講演で、「習近平とバイデンの初の会談は10月のG20サミットという可能性はあるか」との質問に対して「私の予想では、そう遠くないうちに何らかの関わりを持つことになるでしょう」と答えている。
つまり、バイデンは習近平との会談を実行するために環境づくりを準備していることになる。
6月のG7サミットの後に、バイデンはロシアのプーチンと対面で会談したが、その直後にホワイトハウスは、バイデンと習近平との会談が「あるかもしれない」と、その可能性を示唆していた。これは習近平に対して、「私は決してあなた(習近平)に対抗するためにプーチンに会ったわけではないので、誤解しないでね!」というシグナルを発したという意味合いを持つ。
ミリーのトーンダウンに続く、キャンベルのこの講演は、「バイデンvs.習近平」会談の環境づくりの一環だと位置づけるのが適切だろう。
キャンベルは講演で、年内に日米豪印の4首脳会談(クワッド)実現の可能性にも触れたが、トランプ支持派に責められないためのエクスキューズに過ぎないように響く。
中国の反応
キャンベル発言に対する中国外交部の発言は、当然穏やかで歓迎的なムードになっている。外交部ウェブサイトに載せている報道官(汪文斌)の表情からも中国の歓迎ぶりが伺える。
汪報道官は、鳳凰衛星の記者の質問に対して、以下のように答えている。
●米中関係についてだが、中国は誰かの施しを受けて発展してきたわけでなく、あくまでも中国人民の奮闘がもたらした結果だ。アメリカが中国に対して合理的かつ実務的な政策を採用し、協力に重点を置き、相違点を調整し、中米関係の健全で安定した発展を促進することを期待する。