最新記事

事件

ハイチ大統領暗殺、自宅に武装集団 暫定首相は非常事態を宣言

2021年7月8日(木)07時58分
武装集団に射殺されたハイチのモイーズ大統領

ハイチ政府は7日、モイーズ大統領(53)が同日未明、自宅に押し入った武装集団に射殺されたと発表した。写真はモイーズ大統領。2016年11月撮影(2021年 ロイター/Jeanty Junior Augustin)

ハイチ政府は7日、モイーズ大統領(53)が同日未明、自宅に押し入った武装集団に射殺されたと発表した。首都ポルトープランスでは数カ月前から武装集団による抗争が続いていた。大統領暗殺を受け、米国のほか、他の中南米諸国から犯行グループに対する非難が相次いでいる。

ハイチのジョセフ暫定首相は「野蛮な行為」と非難した上で「政府の持続性を確実にし、国を守るために全ての手段を講じる」と言明。閣議後にテレビ放映された演説で、期間2週間の非常事態を宣言した。

ジョセフ氏によると、事件が起きたのは現地時間午前1時ごろ。「身元不明の集団が大統領の自宅を襲撃し、大統領が殺害された。武装集団の何人かはスペイン語を話していた」と説明した。

ハイチの公用語はフランス語とクレオール語だが、当局者は犯行グループは英語とスペイン語を話していたとしており、外国人が含まれていた可能性があるとの見方を示している。

大統領夫人のマルティーヌ氏も銃撃されて重体。米テレビ局によると、治療のため米フロリダ州マイアミに搬送された。

ハイチのエドモンド駐米大使によると、武装集団は米麻薬取締局(DEA)の捜査官を装ってモイーズ大統領の自宅に押し入ったという。

事件を受け、バイデン米大統領は「凶悪な行為を非難する」と述べ、非常に憂慮すべき情勢で、一段の情報が必要と指摘した。

米ホワイトハウスのサキ報道官によると、米政府は「この悲劇的な襲撃」について情報を収集しており、「必要ないかなる支援も実施する用意を整えている」という。

グテレス国連事務総長の報道官は声明で「犯人は裁かれなければならない」と強調。「国連はハイチ政府および国民を引き続き支持する」とした。

国連安全保障理事会の7月の議長国であるフランスのニコラ・ド・リヴィエール国連大使も、大きな衝撃を受け悲しみを抱いていると表明。8日にも安保理の会合が開かれる見通しと述べた。

ジョセフ氏は、安保理の早急な開催を要請し、国際社会による暗殺事件の調査開始を求めた。

在ハイチ米大使館は「現在の治安情勢」を踏まえ、7日は閉館すると発表した。地元メディアによると、ポルトープランスの国際空港は閉鎖。ドミニカ共和国はハイチとの国境を封鎖した。

人口約1100万人のハイチは西半球最貧国で、2010年の大地震やハリケーンなど自然災害からの復興で苦闘していた。

モイーズ氏はバナナ輸出業者から政治家に転身し、17年に大統領に就任。今年に入り野党からは、モイーズ氏が任期を超えて独裁体制を築こうとしているとして批判の声が高まっていた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏とトランプ氏が会談、円滑な政権移行を約束

ビジネス

ビットコイン9万ドル突破、関連銘柄も高い トランプ

ワールド

ヒズボラの非武装化なければ停戦に応じず=イスラエル

ワールド

フィリピン、中国大使を呼び抗議 南シナ海の領海基線
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:またトラ
特集:またトラ
2024年11月19日号(11/12発売)

なぜドナルド・トランプは圧勝で再選したのか。世界と経済と戦争をどう変えるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企画案から瓜二つだった
  • 2
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベースカバーに走らなかった理由を考察
  • 3
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 4
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 5
    中国の言う「台湾は中国」は本当か......世界が中国…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に…
  • 8
    トランプ再選を祝うロシアの国営テレビがなぜ?笑い…
  • 9
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 10
    なぜハリスは負けたのか?【米大統領選2024を徹底分…
  • 1
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫ファンはK-POPの「掛け声」に学べ
  • 2
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に突っ込む瞬間映像...カスピ海で初の攻撃
  • 3
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代型省エネコーティング」で地球規模の省電力を目指すビルズアート
  • 4
    「トイレにヘビ!」家の便器から現れた侵入者、その…
  • 5
    後ろの女性がやたらと近い...投票の列に並ぶ男性を困…
  • 6
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 7
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 8
    「ダンスする銀河」「宙に浮かぶ魔女の横顔」NASAが…
  • 9
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫フ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中