裏帳簿で脱税の証拠を掴まれたトランプ企業、ケチすぎる態度が命取りに
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トランプと、今回起訴されたワイセルバーグ(右) CARLO ALLEGRIーREUTERS
<トランプ・オーガニゼーションの最高財務責任者への支払いを徹底的に管理した結果、脱税の明らかな証拠を残すことに>
トランプ前大統領と一族が運営する非上場のファミリー企業トランプ・オーガニゼーションとアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)が脱税など15件の容疑で起訴された。ワイセルバーグは、トランプが大統領を務めていた間、長男のドニー(トランプJr.)、次男のエリックと一緒にトランプ・オーガニゼーションを率いていた人物だ。
起訴したのは、ニューヨーク州のマンハッタン地区検察。同地区検察のサイラス・バンス検事は、トランプの事業活動を取り巻く疑惑について捜査を続けてきた。今回の起訴は、ビジネスにおける右腕的な存在だったワイセルバーグからトランプに不利な証言を引き出すことが狙いだとも言われている。
この起訴自体は、しばらく前から予想されていた。しかしふたを開けてみると、起訴内容には興味深い情報が含まれていた。トランプ・オーガニゼーションは長期にわたり、ワイセルバーグに支払っている報酬を実際よりも少なく見せることで脱税を助け、しかもその詳細を裏帳簿に記載していたというのだ。
検察によれば、トランプ・オーガニゼーションは、ワイセルバーグに年間94万ドルの固定額で報酬を支払っていた。問題は、その金額をそのまま口座に振り込んでいなかったことだ。同社は税務当局に対しても、本来の支払額を申告していなかった。
孫の学費、家賃、ベンツのリース料
トランプ・オーガニゼーションは報酬の一部を「諸手当」の形で支給し、課税対象所得として申告していなかったのだ。その総額は170万ドルに上るという。具体的には、ワイセルバーグの孫の私立学校の学費、夫婦が暮らすマンハッタンの高級マンションの賃料、メルセデス・ベンツ2台のリース料などを会社が負担していたとされる。
これは、単なる経理処理の手違いではない。トランプ・オーガニゼーションは裏帳簿を作成し、ワイセルバーグに支払った表向きの報酬と諸手当を全て詳細に記録し、合計の支払額が94万ドルになるように留意していたとされている。つまり、この裏帳簿は、「私たちはこのような手口で脱税を実行しました」と白状しているに等しい。
今回、トランプ自身は起訴されていない。しかし起訴状によれば、ワイセルバーグへの諸手当支払いのために発行された小切手の一部には、トランプの署名があるという。