最新記事

宇宙

ベゾス、NASAに20億ドル「キャッシュバック」 月探査計画の契約獲得なら

2021年7月27日(火)09時25分
米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス

米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏は26日、米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官に書簡を送り、宇宙飛行士を月面に着陸させる宇宙船の製造をベゾス氏の率いる宇宙開発ベンチャーのブルーオリジンに委託すれば、NASAのコストを最大20億ドル負担すると表明した。写真はベゾス氏。7月20日撮影(2021年 ロイター/Joe Skipper)

米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏は26日、米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官に書簡を送り、宇宙飛行士を月面に着陸させる宇宙船の製造をベゾス氏の率いる宇宙開発ベンチャーのブルーオリジンに委託すれば、NASAのコストを最大20億ドル負担すると表明した。

NASAは4月、有人月飛行の「アルテミス計画」で、宇宙飛行士を月面に運ぶ宇宙船の建造をイーロン・マスク氏のスペースX社に委託すると発表した。29億ドル規模の契約。

ブルーオリジンと防衛企業のダイネティクスも名乗りを上げていたが、選ばれなかった。ブルーオリジンは、米防衛大手のロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン 、ドレーパーと組んだ。

ベゾス氏はネルソン長官への書簡で、ブルーオリジンが現会計年度を含む複数の会計年度にわたりNASAからの開発費支払いを最大20億ドル放棄することを提案。軌道上での自社技術実証ミッションも自費で実施するとした。その見返りとして、宇宙船建造に関する固定額の受託契約を結び、開発コストの超過分は負担するとした。

ベゾス氏はNASAが短期的な予算の制約を理由に、2社に宇宙船の製造を委託する当初の計画から逸脱したと指摘し、今回の自身の提案によって予算の問題は取り除かれるとした。

「競争がなければNASAの短期と長期の月探査への野望に遅延が生じ、結果としてより多くのコストがかかり、国益にかなわなくなる」と主張した。

NASAの広報担当者はベゾス氏の書簡について承知しているが、月面着陸船製造を巡りNASAがスペースXに入札価格の修正を認めて不当な優位性を与えたとして、ブルーオリジンが米政府監査院(GAO)に抗議していることを理由に、さらなるコメントを控えた。

GAOは8月上旬までに判断を示すとみられるが、業界筋によると、これまでの決定を覆す可能性は低いとブルーオリジンはみているという。

スペースXの広報担当者はコメントの求めに応じていない。

ブルーオリジンは20日、テキサス州で自社開発したロケット「ニューシェパード」を打ち上げ、初の有人飛行に成功。宇宙船にはベゾス氏ら4人が搭乗した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・Amazonのジェフ・ベゾスは地球に還ってこないで...署名が14万筆を突破
・リチャード・ブランソンの宇宙船はどうやって飛んだのか<動画あり>
・前澤友作氏も仲間入り...7人の大富豪たちはなぜ宇宙を目指したのか


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中