EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交
China's 'Tone-Deaf' Diplomacy Hardens Attitudes in Europe, Brussels Expert Says
だがファロンによれば、欧州において中国が直面する最大のハードルは、自国ではまず経験しないようなものかも知れないという。それはエリートと一般市民の世論の間にある「大きな溝」だ。ファロンによれば、コロナ禍が起きてからは特に、中国が(新型コロナウイルスの発生源について)ごまかし続けているとの疑惑もあって、中国に対する人々の不信感は根強い。
ピュー・リサーチ・センターの最新の世論調査でも、欧州を含む多くの先進国・地域において中国に否定的な見方をする人の割合は「過去最高に近いレベル」だった。欧州諸国を見ると、中国に否定的な見方をする人の割合の中央値は66%で、好意的な人の割合の中央値は28%だった。
中国に否定的な見方をする人の割合が63%だったイギリスでは、EU離脱以降、インド太平洋地域への「傾斜」を強めている。ドイツやフランスと同様に、イギリスの対中政策にはこの1年半、厳しい視線が注がれてきた。
中国はEUからの制裁に対する報復措置を取ったのに続き、3月26日にイギリスに対しても制裁を発動した。対象となったのは9人の個人と4つの団体だ。対EUの制裁と同様に、リストに名前が載った個人だけでなくその家族も含め、中国(香港やマカオを含む)への渡航や、中国の市民、組織、企業との取引が禁じられる。
報復制裁で保守党の議員を狙い撃ち
制裁リストに載った中でも大物なのが、昨年4月にシンクタンク「中国研究グループ(CRG)」を立ち上げた保守党のトム・トゥゲンハート下院議員とニール・オブライアン下院議員だ。CRGも組織として制裁の対象となった。下院の外交委員長も務めるトゥーゲンハットは、英中が「バランスの取れた建設的な関係」を築くことを望むと述べた。
トゥゲンハートは本誌に寄せたコメントの中で「パンデミックから気候変動に至る課題の解決に向け、イギリスと中国がよりよい対話の方法を見つけられればと思っている」と述べた。「だがそれには、(中国共産党の)脅迫的な姿勢を終わらせる必要がある」
また彼は「オオカミは大使館ではなく荒野にいるべきものだ」と述べた。そして中国が世界各地で行っている投資に対抗するための、新たなインフラ支援構想へのバイデンの「多国的アプローチ」を支持すると述べた。
遠征中の英海軍の空母「クイーン・エリザベス」を中核とした空母打撃群は今後、南シナ海を横切って日本に寄港する予定だ。
中国はこの空母打撃群のアジアへの派遣を注視しているはずだ。6月には英駆逐艦ディフェンダーが黒海を航行中にロシアから警告射撃を受ける事件もあったが、「同様の攻撃が起きるはずはない」とトゥゲンハートは言う。