EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交
China's 'Tone-Deaf' Diplomacy Hardens Attitudes in Europe, Brussels Expert Says
中国政府はどちらにしてもCAIを本気で成立させる気はなかった、という分析にはファロンは賛同しない。合意は現在、棚上げされており、欧州議会は制裁解除になるまでこれ以上の進展はないとほのめかしている。この結果は中国にとって「大失敗」にほかならない、とファロンは考えている。
中国を取り囲む政治情勢が変わる別の兆候は、バイデン大統領がG7、NATO、EUのリーダーたちと重ねた会談からも探り出すことができる。
CREASのファロンは、連続する首脳会談から声明が出されるたびに、中国政府が迅速に対応したことに注目した。
中国のこうした反応は、バイデンと彼の計画──同盟国を結集し、欧州における中国政府の影響力を相殺すること──に対する中国の警戒心を示しているように見えた。
トランプ政権の4年間、ヨーロッパのアメリカに対する信頼は失われていた。だがそれはもう過去のものとなり、バイデンと彼の外交チームはすでに失われた時間を取り戻している。だが欧州の指導者たちが、アメリカが再びテーブルの上座につくことを許すかどうかはわからない、とファロンは言う。
G7とNATOは見たところ足並みをそろえているが、中国が突きつけてくる課題全体への解決を提案するには至っていないという見方もあるし、矛盾も目に付く。
6月14日にNATOが共同声明を出した直後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「(中国は)北大西洋にはほとんど関係がない」と発言した。だが一方でフランス海軍の艦船は、南シナ海における航行の自由を守るための作戦に参加している。
また4月には、ベンガル湾で行われた日本とアメリカ、オーストラリアとインド(通称クアッド)の共同演習に参加。5月には「ジャンヌ・ダルク21」と呼ばれる陸海軍の練習航海の一環として、日本での共同演習に参加した。
NATOが中国の影響力拡大を「過大評価」することに警鐘を鳴らしているドイツのアンゲラ・メルケル首相も、近く海軍の艦艇をインド太平洋地域に派遣することを了承している。
中国がEUにとって最大の貿易相手国の1つであることは変わりない。だがその一方でEUは、加盟国とその重要なインフラを外部(中国であろうと何であろうと)からの過度な影響力から守るため、ゆっくりだが足並みをそろえた対応を取ってきた、とファロンは言う。
その一例が、域外からの直接投資のスクリーニング制度や、7500億ユーロというEU史上最大規模のコロナ復興基金だ。