最新記事

中国外交

EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交

China's 'Tone-Deaf' Diplomacy Hardens Attitudes in Europe, Brussels Expert Says

2021年7月5日(月)18時38分
ジョン・フェン

中国政府はどちらにしてもCAIを本気で成立させる気はなかった、という分析にはファロンは賛同しない。合意は現在、棚上げされており、欧州議会は制裁解除になるまでこれ以上の進展はないとほのめかしている。この結果は中国にとって「大失敗」にほかならない、とファロンは考えている。

中国を取り囲む政治情勢が変わる別の兆候は、バイデン大統領がG7、NATO、EUのリーダーたちと重ねた会談からも探り出すことができる。

CREASのファロンは、連続する首脳会談から声明が出されるたびに、中国政府が迅速に対応したことに注目した。

中国のこうした反応は、バイデンと彼の計画──同盟国を結集し、欧州における中国政府の影響力を相殺すること──に対する中国の警戒心を示しているように見えた。

トランプ政権の4年間、ヨーロッパのアメリカに対する信頼は失われていた。だがそれはもう過去のものとなり、バイデンと彼の外交チームはすでに失われた時間を取り戻している。だが欧州の指導者たちが、アメリカが再びテーブルの上座につくことを許すかどうかはわからない、とファロンは言う。

G7とNATOは見たところ足並みをそろえているが、中国が突きつけてくる課題全体への解決を提案するには至っていないという見方もあるし、矛盾も目に付く。

6月14日にNATOが共同声明を出した直後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「(中国は)北大西洋にはほとんど関係がない」と発言した。だが一方でフランス海軍の艦船は、南シナ海における航行の自由を守るための作戦に参加している。

また4月には、ベンガル湾で行われた日本とアメリカ、オーストラリアとインド(通称クアッド)の共同演習に参加。5月には「ジャンヌ・ダルク21」と呼ばれる陸海軍の練習航海の一環として、日本での共同演習に参加した。

NATOが中国の影響力拡大を「過大評価」することに警鐘を鳴らしているドイツのアンゲラ・メルケル首相も、近く海軍の艦艇をインド太平洋地域に派遣することを了承している。

中国がEUにとって最大の貿易相手国の1つであることは変わりない。だがその一方でEUは、加盟国とその重要なインフラを外部(中国であろうと何であろうと)からの過度な影響力から守るため、ゆっくりだが足並みをそろえた対応を取ってきた、とファロンは言う。

その一例が、域外からの直接投資のスクリーニング制度や、7500億ユーロというEU史上最大規模のコロナ復興基金だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中