EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交
China's 'Tone-Deaf' Diplomacy Hardens Attitudes in Europe, Brussels Expert Says
EUが3月22日に発表した制裁は、中国だけに向けられたものではなく、北朝鮮、ロシア、その他の国における人権侵害を対象としたパッケージの一部だった。この制裁はアメリカ、イギリス、カナダとも協調しているが、EUが人権侵害を理由に中国を制裁するのは、天安門広場での学生主導の抗議行動を中国政府が残忍に弾圧した天安門事件に対する1989年の武器禁輸以来初めてだ。
EUが中国を制裁する準備をしていたことは、中国指導部に知られていた。「こうしたことは、EU本部ではすぐ外に伝わってしまう」と、ファロンは言う。
その後、EUは「処罰の対象とする人物をとても慎重に選んだ」が、EUの対応は多くの人がやりすぎとみなし、親中派の人々にとっては「ほとんど政治的に擁護できない」やりかただった。
中国の報復制裁は、欧州当局者と学者10人および4団体が標的となった。そのなかにはEUの対中関係代表団の団長を務めるラインハルト・ビュティコファー議員(ドイツ緑の党)がいた。全加盟国の大使で構成されるEUの主要な外交政策意思決定機関である政治・安全保障委員会も対象となった。
制裁を発表した声明の中で、中国外務省は、EUは「過ちを是正する」必要があると述べ、さらなる措置を取ると脅した。
ねらいは米欧の分断
中国政府の対応は「まさに民主主義の仕組み」に対する攻撃だった、とファロンは言う。「それに対して反撃がこないと思うとしたら、中国はひどい間違いを犯している」
だが、はるかに心配なのは、EU本部の中国特使が本国政府により適切な対応を助言したにもかかわらず、それが見過ごされたことだ。ファロンは、特使を無視したのは中国の最高幹部かもしれないと考えている。
「私は中国の特使たちに会った。とても賢く、才能のある人々だった。本国政府の人々が特使たちの話を聞いているとは思えない」と、ファロンは言う。「習近平が都合のいいことしか伝えない人々の話しか聞いていないという危険もある。彼らは破滅的な過ちを犯している」
EUと中国の包括投資協定は、EU側の中国市場へのアクセス権拡大を約束しており、この点では中国側にあまりメリットはない。だが習にとって協定の締結はきわめて巧みな地政学的な成果となるものだった。次期バイデン政権は反対の姿勢を見せていたものの、中国とEUは昨年12月に大筋で合意に達した。
ジョー・バイデンが11月の大統領選挙に勝利した後、習がCAIを軌道に乗せるためにみずからテコ入れしたことをマスコミは指摘した。
「習はバイデンが大統領に就任する前こそ、アメリカとEUの関係に楔を打ち込むチャンスを見た」とファロンは言う。
「中国はどちらが大統領選に勝つか、結果がでるまで待っていたという感じがする。トランプが勝っていたら、中国はCAIを締結する必要はなかった。バイデンが勝った場合、中国はすばやく動かなければならなかった。だから選挙の結果が出るまで静観していたのだ」